欧州でも重要な政治イベントが目白押しだ。1月、英国ではEU離脱(ブレグジット)交渉を開始するために議会の承認が必要か否かについて、最高裁が判決を出す。判決を受けて議会が離脱交渉にかかわる場合、EU単一市場へのアクセス確保よりも移民の制限が優先される“ハードブレグジット”の可能性は低下すると考えられている。そして、3月にはオランダ総選挙、4月下旬から5月上旬にフランス大統領選挙、そして秋にはドイツの総選挙が実施される予定だ。
現在、欧州各国では移民や難民に対する反感が追加的に高まっている。特に、ドイツでは首都ベルリンで、クリスマス商戦でにぎわうマーケットにトラックが突入するテロ事件が発生し、難民受け入れを積極的に進めたメルケル政権への批判が高まっている。ドイツ以外のEU加盟国でも自国第一を主張する右派のポピュリズム政党への支持が高まっている。今後の選挙などの結果次第では、金融市場が混乱する可能性も排除できない。
要注意のフランス大統領選挙
なかでも注意が必要なのは、フランスの大統領選挙だ。同国の大統領選挙では、1回目の投票で50%以上の得票率を確保する候補がいない場合、上位2名での決選投票が行われる。各種世論調査などを見ていると、1回目の投票では勝負がつかず、右派・共和党の候補であるフィヨン元首相と、極右・国民戦線のル・ペン党首の一騎打ちになるとの見方が多い。
決選投票に関して、多くの政治アナリストらの見方では、左派の社会党と共和党の反ル・ペン票がフィヨン元首相に流れ、ル・ペン党首は当選しないとの予想が多い。強硬に移民、難民の排斥やEU懐疑主義を唱えるル・ペン党首の主張は、かなり過激だ。理性的に考えると、フィヨン氏の当選がフランスと欧州にとって良い決定であることは確かだ。
しかし、16年6月の英国国民投票、11月の米国大統領選挙のように、想定外の展開もありうる。共和党の候補者選びに関しても、多くのアナリストらはフィヨン氏が大統領候補に選出される可能性は低いと考えていた。それは、フィヨン氏が親ロシア、シリアの考えを持っており、ル・ペン党首ほどではないにせよ反移民の考えを持っているからだろう。
そう考えると、フランスの政治は徐々に自国優先、EUからの離反に向かっている。そして、難民が関与するテロが続いていることを考えると、5月の決選投票にてル・ペン党首が当選する可能性は排除すべきではない。独英に次ぐ欧州第3位、世界第6位の経済規模を誇る同国で極右政党が政権を獲れば、欧州全体に無視できない影響が及ぶ。オセロをひっくり返すように、各国に排他主義、自国優先、反EUの世論が広まりかねない。