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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

半導体の素人がAIで製造した半導体が、熟練技術者より「優れた品質」という時代へ

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半導体製造にもAIが侵入してくる


 半導体製造の世界にも、センサー、ビッグデータ、IoT、そしてAIの技術がじわじわと侵入してくることはある程度、予想していた。

 量産工場に数百台ある製造装置の1台1台に、多種多様なセンサー設置され、そのセンサーが検出する情報を基に、装置が自分で自分の故障診断をし始めるだろう。軽微なトラブルなら自分で自分を修復するようになるかもしれない。

 そして量産工場にある数百台すべての製造装置のこのような情報がビッグデータとして収集され、深層学習機能を持ったAIが、生産性や歩留り向上を自動で行うようになるだろう。また、装置の保守点検を自動で行い、深刻なトラブルを未然に防ぐようになるかもしれない。

 当初私はここまでは予測していた。しかし、元東京エレクトロンで現在Tech Trend Analysis代表の有門経敏氏から、「深層学習機能を持ったAIが、プロセスフローを構築し、半導体を製造するようになるのではないか」という予測を聞かされた時は、「それは無理だ」と思った。その理由は、プロセスフローの構築が高度な擦り合せ技術であるからである。

 半導体メーカーでプロセス開発に関わっている方々も、恐らく私と同じように、「それは無理だ」と思うことだろう。しかし結果的に、矢野技師長の論文を読んで私は宗旨替えをした。今では、必ずやAIが半導体製造をする時代がくるだろうと確信している。

 以下ではまず、最初は「無理だ」と思った理由を説明しよう。



半導体のプロセス開発の難しさ


 半導体の製造は、設計、プロセス開発、量産に分かれている(図1)。プロセス開発では、設計結果を基にして、シリコンウエハ上にトランジスタや配線からなる3次元の構造物(チップ)を製造するための工程フローを構築する。工程フローは500~1000ステップに及ぶ。そして、この工程フローを構築する技術を「インテグレーション技術」と呼ぶ。

 インテグレーション技術がいかに難しいかを示すために、500工程からなるDRAMの歩留りYを数式で書き表してみたい。1枚の300mmウエハ上には1000個のDRAMチップが同時につくり込まれるとしよう。

 まず、500工程中のn番目の工程歩留りYnは、0~1の間の値を取る。完全に最適化された工程歩留りは1、最悪な工程歩留りは0となる。最終的なDRAMの歩留Yは、すべての工程歩留りの積になる。