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中国、習近平が恐れる「人民の不満増殖」…続く資金流出と債務膨張で「最悪の事態」も

文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授
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避けて通れない構造改革

 
 中長期的な経済動向を考えると、中国政府が金融システムの整備、そして過剰な生産能力の解消といった構造改革を進めることが不可欠だ。バブル崩壊後の日本の経験に照らしても、需給ギャップが拡大するなかで経済再生を進めるためには構造改革が欠かせない。それができないと、景気刺激策が一巡するに伴って需要の落ち込みが顕在化し、これまで以上に経済の先行き懸念が高まることも想定される。
 
 現在、習近平国家主席の発言を見ていると、自身の権力基盤の強化に力を入れているものの、中長期の視点で経済の安定をどう考えているかは不透明だ。17年秋、共産党の党大会を経て習近平は2期目の政権運営に入る。新年を迎えるスピーチのなかで習国家主席は、中国の権益や領土を守ること、腐敗の撲滅を進めると述べた。

 これは、2期目の政権運営に向けて自らの権力基盤を一層強化する考えを含んだ発言だ。経済成長率が右肩下がりにあるなか、習近平主席は失業が増えるなど社会の不満が高まることはどうしても避けたい。そのためにも、財政の出動を通して計画に沿った成長を達成することは不可欠だ。

 構造改革に関して、習近平は国有企業の再編を通して、過剰な生産能力を解消していこうとしている。特に、重視されているのが混合所有制度(国有企業への民間資本参加)を実現し、部分的に民営化を行うことだ。本当に中国が過剰な生産能力の解消を進め、生産性の低い企業、産業を再生するためには、全面的な民営化を行うことで企業家精神を涵養し、経済に市場原理を浸透させていくべきだ。

 一人っ子政策の影響から中国の生産年齢人口が減少に転じ、資本流出懸念も根強いなか、中長期的な経済の安定には、民間企業のイノベーション(創造的破壊)が必要だ。政府が経済・金融市場への管理を続け、対処療法的に財政政策を用いる限り、徐々に中国経済の不安定感は高まらざるを得ないだろう。
(文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授)

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