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豊洲市場移転と石原慎太郎元知事の「闇」と「嘘」…崩れる科学的調査への信用

文=深笛義也/ライター
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豊洲市場移転と石原慎太郎元知事の「闇」と「嘘」…崩れる科学的調査への信用の画像1石原慎太郎元東京都知事(Motoo Naka/アフロ)

 築地市場(東京都中央区)から豊洲市場(江東区)への移転問題で、法律に基づく強い調査権限を持つ調査特別委員会(百条委員会)が設置される見通しとなった。22日開会の東京都議会で公明党は設置を求めるとみられ、石原慎太郎元知事と共同歩調で移転推進の旗振りをしてきた自民党も、百条委設置に傾いたと伝えられている。民進党や共産党は百条委設置の必要性を訴えていた。

 すでに都議会の特別委員会は、石原氏や側近だった浜渦武生元副知事らを参考人招致すると決めており、石原氏は応じる意向だった。百条委はさらに強い調査権限を持つ。

 石原氏は豊洲移転問題について記者会見を「やる」「やらない」と発言を二転三転させていたが、現在は来月3日に行う意向を示している。そもそもこの問題に関して、石原氏に重大な失政はあったのだろうか。ジャーナリストの鈴木哲夫氏に話を聞いた。

安全と信頼

「確かに知事の仕事量は膨大で、何もかも細かいことまですべて知っているということはないでしょう。しかし、知事というのは都民の税金を使うための決裁をするわけですから、知らなかったとしても、立場上の責任は逃れられないと思います」

 豊洲市場で問題視されている、盛り土をせずに中が空洞のコンクリートの箱を埋めるという構造は、石原氏の周辺から出てきた案ともいわれている。

「石原さんが鳴り物入りでつくった新銀行東京が、2006~07年に莫大な赤字を出して、多額の税金を注ぎ込まなければならないという状況になった。豊洲でも計画通りに盛り土をやると、とんでもない額になってしまう。新銀行東京で批判されているのに、またこの豊洲で汚染が見つかって、安全対策に莫大な税金を注ぎ込むことになると、批判に耐えられない。なんとか安くできる方法はないかということで、知事の周辺が当たりだしたのです。石原さんは週に1回金曜日に、ランチミーティングをやっていました。副知事や知事本局長、特別秘書などの幹部と、お昼ご飯を食べながらいろいろな話をしていました。そこで中を空洞にするという手法が誰かから出てきたのです。浜渦氏はその時はすでに副知事の座は追われていましたが、石原さんは浜渦さんに電話して、『おい、何か安い方法はないか』などと訊いていました」

 コンクリートの箱を埋めるというのもひとつの建築方法であり、地下水が汚染されていようと、それが作業をする地上に上がってくるわけではないから問題ないという声も、一部ではある。

「安全性を確保するには、もちろんいろんな方法があるわけです。盛り土というのも、そのひとつ、コンクリートの箱を使うという考え方もあるでしょう。01年頃、浜渦さんが副知事として豊洲移転に取り組んでいた時は、地下にドーンと分厚くコンクリートを流し込んで、コンクリートで土地を一段高くするくらいにすれば、地下の水は絶対に出てこないという案もありました。どれを選ぶかというのは、これは時の知事なりが、予算を含めて選べばいいのです。盛り土というのは、当時の専門家会議が出した一つの結論です。

 何が問題かというと、『盛り土でやってます』と嘘をつきながら、別の方法をやっていたっていう点に尽きます。結局、信頼の問題になってくるわけです。『安全』と『安心』、言い換えれば『科学的で客観的なデータ』と『都政への信頼』という2つの問題があります。本当はそれは分けて考えなければいけませんが、昨年以来、特に『信頼』が失われてきていました」

汚染対策

 都は1月14日、豊洲市場の安全性を確認する9回目の地下水モニタリング調査の結果を発表した。環境基準を超える有害物質を計72地点で検出。ベンゼンは最大で基準値の79倍、ヒ素は同3.8倍で検出された。シアンも30地点以上で検出された。

小池百合子知事は昨年からずっと、科学的な調査に基づき判断すると言い続けてきました。つまり前述した『科学的で客観的なデータ』です。ところが、9回目で79倍のベンゼンが出たり、シアンが出た。それまで、客観的科学的にずっとゼロだったのに、なんで79倍なんですかと。そうなると、今までの検査はちゃんと行っていたのか、手心を加えていたのではないかという疑念を持たれてしまいます。今やっている調査の結果が4月に出ますが、これがゼロでも、果たして都民は信用するでしょうか。今回と同じように70~80倍の数値だったら、これはもうさすがに無理だという話になるでしょう。また、今後ずっと『今までゼロだったのは、どうしてなんだ』と、永遠に疑問を持ち続ける人も出てくるかもしれません。それくらい、信頼が崩れてしまったということです」

 では、石原氏が会見することで、真相は明らかになるのだろうか。

「16日発売の『週刊新潮』(新潮社)での石原さんのインタビューを見ると、豊洲移転は既定路線だったとか、浜渦さんがやっていたことだとか言っていて、肝心のところの説明はまだまだです。豊洲の問題は3段階に分かれています。1番目は豊洲に絞られた時期。これは石原さんの前の青島幸男知事の時です。『豊洲に移転するしかないと最初は私が決めた』と、当時の中央卸売市場長がメディアに明らかにしましたよね。どうやって候補が絞られたのか、それがある程度わかったわけです。

 第2段階は、東京ガスとの土地の取引、これは浜渦さんがやっていたのでわかる。汚染対策は東京ガスが行うということで、合意に至っているわけです。第3段階というのは、浜渦さんが辞めた後の08年に都の専門家会議が豊洲の東京ガス跡地を調査したら、基準値の4万3000倍のベンゼンが出てきてしまったという問題。汚染対策は東京ガスがやらなければいけないのに、なぜ売買契約を結んで、東京都が金を出して汚染対策したのか。早く豊洲に移したかった理由があったのかもしれませんが、誰がそういう判断をして動いたのか。この時期の副知事や幹部、ランチミーティングのメンバーということになりますが、彼らがちゃんと証言すれば、ことの全貌は判明すると思います。その上で石原さんが立場上の責任で、申し訳なかったということで謝る。そうしなければ、決着にはならないでしょうね」

 都政の闇が暴かれることを、期待したい。
(文=深笛義也/ライター)

深笛義也/ライター

深笛義也/ライター

1959年東京生まれ。横浜市内で育つ。10代後半から20代後半まで、現地に居住するなどして、成田空港反対闘争を支援。30代からライターになる。ノンフィクションも多数執筆している。

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