4月1日付で、複写機大手のリコーの社長が交代する。山下良則副社長が代表取締役社長執行役員兼CEOに昇格し、三浦善司社長兼CEOは特別顧問に退く。山下氏を社長に指名した近藤史朗会長は、代表権は返上するが会長を続投する。
リコーでは、社長退任後は会長となり、通算10年以上経営の最前線に君臨するのがこれまでのパターンだった。たとえば、近藤氏は社長を6年、会長を4年務めており、さらに今後も会長を続ける。
近藤氏の前任の桜井正光氏は、社長11年、会長6年の長期政権だった。ところが、三浦氏は4年の短期間で社長を退き、しかも会長に就くのではなく特別顧問になり、経営の第一線から完全に姿を消す。
精密機器業界では、「長期政権を狙う近藤氏が、トップの首を三浦氏から山下氏にすげ替えて、“院政”を敷く人事」と受け止められている。近藤氏が社長の6年間は事実上、代表権を持つ会長の桜井氏の“院政”だった。桜井氏が特別顧問に退き、近藤氏は会長に就いてからやっとリコーの最高実力者になった。つまり、トップに立ってからまだ4年であり、やる気満々だろう。
近藤氏は、院政との批判をかわすために代表権を返上し、取締役会議長には元日本銀行理事の稲葉延雄氏が就任する。だが、「早晩、代表権を取り戻すだろう」と業界からは冷ややかな声が聞こえてくる。
近年のリコー社長は、技術畑出身者が続いていた。桜井氏は「販売のリコー」で初の技術者社長だ。近藤氏も画像システムの技術者だ。そんななか、三浦氏は異例中の異例で、経理の出身だ。今回、新しい社長に就任する山下氏は広島大学工学部卒の技術者。直近ではIT(情報技術)サービス事業を統括していた。
山下氏が社長に起用された理由について、近藤氏は「明るくて生意気なところ」と述べている。
インド子会社の不正会計で171億円の損失
リコーはキヤノンや富士ゼロックスと並ぶ複写機・複合機の大手だ。しかし、昨今の企業は、書類を紙でなく電子データで保存するデジタル化が進み、事務機器市場は世界的に縮小した。その影響で、リコーは売上高の65%を占める複写機など事務機器が苦戦し、業績が急速に悪化した。
そこで、2017年3月期の業績予想(国際会計基準)を下方修正した。連結売上高は前期比9%減の2兆円、本業の儲けを示す営業利益は61%減の400億円、純利益は84%減の100億円に悪化する見込みだ。年間配当も従来予想より10円引き下げて35円とする。