だが、大幅な減益は市場縮小だけではなく、別の理由がある。インドのボンベイ証券取引所に上場している現地子会社、リコーインドの不正会計の後始末をするために損失が出たのだ。
16年6月20日付ブルームバーグは、このように報じている。
「リコーインドの株価は上場から約20年でほぼ5800%上昇し、昨年(15年)8月に過去最高値を記録した。しかし、今年(16年)5月26日の売買停止で上昇分の大部分を失った。親会社リコーが世界で最も倫理的な企業の一社に選ばれてからわずか2カ月後だった」
リコー本体は、リコーインドに74%出資している。途中交代した監査法人がリコーインドの16年3月期決算を監査する過程で不正行為が発覚した。
最終的にリコーインドの16年3月期の最終赤字は171億円に膨らみ、債務超過に陥ったためリコーは保有するリコーインド株式の無償消却に応じ、171億円の増資(負担)を引き受けた。
リコー本体は16年3月期の連結決算で損失の一部を計上していたが、17年3月期に追加分の65億円の損失を計上する。これがリコー本体の連結純利益を押し下げる原因となった。
リコーインドの不正会計によって、リコーのガバナンス(企業統治)が機能していなかったことが明らかになった。米シンクタンク、エシスフィア社が、不正がない「もっとも倫理的な企業」の1社にリコーを選んだ直後だったから、なんとも皮肉な話である。
リコーインドの不正会計事件の責任を問われ、三浦氏は引責辞任に追い込まれた。経理出身の三浦氏は、会計に精通しているプロと自認していたのだから、辞任するしかなかったのだ。
事務機に代わる成長の柱が見えない
新社長に就く山下氏は、副社長として中期経営計画をとりまとめた。18年3月期から2年間で1000億円のコスト削減を目指す。16年10月、国内外18カ所ある主要工場のうち、複写機などを生産する米国工場などの2カ所の生産拠点を閉鎖する方針を発表した。本体では、経理や人事など間接部門の人員を半減する。経費削減の象徴といえるのが本社の移転だ。現在、借りている銀座の本社ビルから出て、自社ビルである大森に本社を移す計画だ。中期経営計画を立案した山下氏が社長に就任して、陣頭指揮を執る。