7月4日、アニプレックスが2017年3月期の決算公告を掲載。最終利益は前年同期(16年3月期)に比べて約2.2倍となる165億6,2000万円と大幅に数字を伸ばし、アニメ・ゲームファンを驚かせた(売上高が1,032億4,100万円、営業利益が244億7,000万円、経常利益が243億9,100万円)。
アニプレックスはソニー・ミュージックエンタテインメントの100%子会社で、アニメをはじめとする映像の企画・製作・販売および配給、ゲームアプリの運営などを行うアニメ・ゲームファン御用達の企業。
アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』や<物語>シリーズ、『アイドルマスター』、『銀魂』といった数々のヒット作を抱える業界大手だが、ここ数年の伸びがただ事ではない。純利益は14年3月期:30億円、15年3月期:38億6,900万円、16年3月期:73億6,900万円、そして今年が165億6,2000万円と推移しており、わずか3年前の数字と比べて5倍以上にまで伸ばしている。
躍進の要因となったのは、なんといってもアニプレックスが人気ゲームブランド・TYPE-MOONと共同運営するゲーム『Fate/Grand Order』(以下、『FGO』/開発元:DELiGHTWORKS)と思われる。
『FGO』は、ゲームブランドTYPE-MOONによる人気ゲーム『Fate/stay night』を元として制作されたスマートフォン専用ロールプレイングゲーム。元になった『Fate/stay night』の人気や、アプリゲームには珍しい重厚なストーリー展開が好評を博し、『FGO』は15年7月のサービス開始から瞬く間に人気ゲームに。
その売上げはすさまじく、親会社であるソニーの2016年度第2四半期の決算報告内にて、映像メディア・プラットフォームの増収について「営業利益に貢献した」として、名だたる作品・商品が並ぶ中で、名指しでタイトル名を取り上げられるほど。また昨年10月には中国にも進出。中国AppStore売上ランキングで上位をキープし続け、今年5月にはついに1位を一時期ながら獲得している。
今年6月から配信が始まった北米ではセールスが苦戦しているようだが、アプリゲームが1本でも大ヒットとなると、ソニーほどの企業がタイトル名を取りざたするほどの収益を生むのだ。すでに供給過多ぎみで、サービス開始から数カ月で撤退するようなゲームも多く、“重課金”などを巡ってネット上を騒がす機会も多いアプリゲームだが、この数字を見てしまうと今後も各社による過熱競争は続きそうだ。
なお、この『FGO』のゲームオープニング映像を制作したアニプレックスの子会社であるアニメ制作大手、A-1 Picturesの17年3月期の最終利益は、前年同期から30%減の2億4,200万円(7月3日に公告)。「円盤(※Blu-ray、DVDのこと)を売るのがバカらしくなるな」「オタクコンテンツの王様はソシャゲだな」といった嘆きが、一部のアニメファンからこぼれていた。アニメーターや社員の薄給・ブラック労働ぶりがなにかと報じられているアニメ制作会社からも、多大な収益を生むゲームやその他コンテンツが飛び出すことに期待したいものだ。
(文=編集部)