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鷲尾香一「“鷲”の目で斬る」

日銀、信認喪失が深刻…見通し外れ連発で「嘲笑の的」に

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日銀の黒田総裁(ロイター/アフロ)

 日本銀行の金融政策決定会合が行われ、その結果が公表された20日、「物価上昇率が安定的に2%に達する時期の見通し」について、これまでの「2018年度頃」から新たに「19年度頃」に先送りされたことが明らかになると、市場関係者の間からは「また先送りか」という嘲笑にも似た声が多く聞かれた。

 それもそのはず、日銀が「物価上昇率が安定的に2%に達する時期の見通し」を先送りするのは、今回で6回目となる。3カ月ごとに公表される「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」では、17年度の消費者物価上昇率(生鮮食品を除く)は前年度比1.1%で、前回4月のレポートでの1.4%から0.3ポイントの下方修正、18年度は1.7%から1.5%に、19年度も1.9%から1.8%に下方修正した。

 一方で、経済成長率見通しは17年度を1.6%から1.8%、18年度を1.3%から1.4%といずれも上方修正、強気の見方を示した。

 同日の記者会見で黒田東彦総裁は、物価上昇の勢いが鈍い理由について「企業や家計に根強いデフレマインドがある」と指摘した上で、ただ「こういった状況がずっと続くのはありえない」とし、いずれは賃金が上昇することで物価上昇につながるとの認識を示している。

 黒田総裁は、物価上昇見通しの先送りが続いていることについて「見通しが外れたから(日銀の)信用がなくなることにはならない」と強弁。「見通しについて悲観的につくったり楽観的につくったりすることはあり得ない」し、国際通貨基金(IMF)など海外機関も同様に見通しを外していることを引き合いに出し、開き直りとも取れる発言をしている。

日銀に対する不信感


 しかし、問題なのは物価上昇見通しが先送りされていることではない。

 13年3月の黒田総裁就任以降、量的・質的緩和導入、14年10月の量的・質的緩和拡大、16年1月のマイナス金利導入、同年9月の長短金利操作付き量的・質的緩和と“手を変え品を変え”て前例のない金融緩和策を実施し続けて4年以上が経過した。この間、常に民間の物価上昇率見通しと日銀の物価上昇率見通しには乖離がある。

 たとえば、前回まで日銀は2%の物価上昇率を18年度頃と見通していたが、民間シンクタンクなどの見通しでは1%程度となっている。物価見通しを立てるにあたって使われる経済データは、失業率や有効求人倍率、需給ギャップや賃金上昇率など、民間も日銀も同じものだ。それなのに、なぜ民間と日銀では物価上昇の見通しに大きな乖離が生まれるのか。その点を正確に説明しないことで、日銀に対する不信感が生まれている。そのことのほうがはるかに問題なのだ。

「日銀は民間、市場との対話が大切だと言いながら、説明義務を怠っている。こうした姿勢は日銀に対する不信感につながり、市場の日銀に対する信認は低下し、今後の金融政策に大きな悪影響が出るだろう」(市場関係者)

 今回の先送りでも、「企業や家計に根強いデフレマインドがある」といった曖昧な説明ではなく、その経済指標のどの部分を、どのように読み込んだ結果なのかを明確に示すべきだろう。

 黒田総裁の任期は18年4月8日だ。続投することがなければ別の人物が日銀総裁に就任する。「黒田総裁は、ついに任期中に物価上昇率2%を達成することができないと敗北宣言をした。あとは、無事に逃げ切ることだけを考えているのだろう」(市場関係者)と厳しい声まで出る始末だ。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)

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