7月11日、ついに共謀罪(改正組織犯罪処罰法)が施行された。逮捕したい人をいつでも逮捕できる“警察全権委任法”であることが共謀罪の本質なので、国民主権から警察主権へ向けて日本は大きく舵を切ったことになる。
日本の刑法は、犯罪を具体的に実行(既遂)して社会に害を与えた場合に処罰されるのが原則である。それを根底から覆すのが共謀罪だ。
共謀罪では、犯罪を計画・合意したと捜査機関が判断した段階で捜査の対象になる。わかりやすく言えば、犯罪を実行していないのに罪人にされるわけだ。計画があっただとか黙示の合意があったなどとされて犯罪人にされるのだから、頭の中で考えたこと、心の中で思ったことが処罰されてしまう。
しかも対象犯罪が277もあるため、ものすごく範囲が広く、何を話しあったら犯罪者にされるのかほとんどの人にはわからない。このような危険があるため、市民運動、住民運動、労働運動などの活動を抑圧するためのものと強い批判がある。
冷静に現実社会を見れば、従来の法体系でも、政府にたてつく活動家や組織に対しては、警察は思いのままに逮捕したり家宅捜索をかけられていた。
それにもかかわらず共謀罪の強行採決を急いだのは、一部の人々を対象としたこれまでの監視を、一般人や「こんな人たち」に拡大したいからではないのか。ここが決定的に重要なところだ。
今や流行語になりつつある「こんな人たち」とは、東京都議会議員選挙戦最終日の7月1日夕刻、東京・秋葉原の街頭で演説に立った安倍晋三首相に対し、「アベ辞めろ」コールをした人たちのことである。
感情的になった安倍首相が「こんな人たちには負けられません」と抗議者に向けて言い放ったわけだが、その背後には政権を批判したり、政府に不信感を持つ膨大な人々の存在がある。そして、急速にそのような人たちが増えている。
安倍首相の「こんな人たち」発言は、自分を批判する人々を敵とし支持者を味方とする国民を二分・分断する考え方だ。一国の首相の発言としては問題があるが、あらゆる分野で人々が分断されている現実社会を素直に表現した発言ともいえるだろう。当然、共謀罪も「こんな人たち」に適用される可能性は高い。