「こんな人たち」と「あんなメディア」と共謀罪
施行1週間前の7月4日、共謀罪のメディアへの影響を考えるシンポジウム「共謀罪後も進む自由・民主主義の改変とメディアの試練」(主催・共謀罪を考えるメディア関係有志の会)が都内で行われた。そこでは、「政権寄りメディア」と「批判的なメディア」という二分だけでなく、共謀罪そのものの情報量が二分化されていることなど、興味深い報告があったので、紹介しておこう。
当日参加していた通信社記者が、会場から次のように報告した。
「第二次安倍政権が誕生してから、政権の支持・不支持をめぐってメディアが二分化する傾向が強まっている。新聞でいうと、安倍政権支持が読売新聞・産経新聞、批判的なのは朝日新聞・毎日新聞・東京新聞。日本経済新聞は最近、ある種の中間派のような傾向がある。
論調の二極化に加え、情報量の二極化がある。共謀罪の報道についても、それはいえる。4月19日衆議院法務委員会で審議開始から、(衆議院法務委員会で強行採決された2日後の)5月21日までの間に、朝刊にどれだけ共謀罪の記事が掲載されたか記者は調査してみました」
その結果は次のとおりだった。
朝日 93本
毎日 63本
読売 29本
参議院に付託されて以降は、産経新聞と東京新聞も加えて調査したという。参院で審議が始まった5月30日から強行採決当日の6月15日の朝刊まで、各紙の掲載記事本数は次の通り。
朝日…48本、国会質疑詳報4回
毎日…50本、同3回
東京…69本、同5回
読売…21本、同0回
産経…20本、同0回
上記の国会質疑詳報についても言及された。
「新聞では国会における質疑の一問一答を掲載することがある。そのために記者の労力が必要なわけで、これを載せることで新聞社のスタンスが表れる」(同)
読売新聞と産経新聞は、国会質疑の詳報が、なんとゼロだ。反対する野党議員の質問も載らないということであり、案に反対する動きについての記事は、この2紙には載らないということでもある。
そして情報量の差によって、読売・産経の読者と、朝日・毎日・東京の読者は完全に分断されることになるだろう。