「建設現場は戦場なのか」――。
新国立競技場建設に当たっていた23歳の現場監督が自殺し、両親が7月12日付で労働災害認定を上野労働基準監督署に申請した。男性は昨年4月に新入社員として建設会社に入社したばかりで、昨年12月に地盤改良工事の現場監督を任された。しかし月212時間を超える残業、深夜勤務、徹夜などの過重労働によってうつになり自殺したとみられている。工期とコスト優先で現場監督と職人の負担は増すばかり。それでも大手・準大手ゼネコンは、空前の好決算に恵まれている。
今回、準大手ゼネコン勤務で50代の現場代理人兼監理技術者であるAさんに、建設現場における過酷な労働実態などの問題点について聞いた。
残業100時間超えは当たり前
――今回の過労死事件について、何か思うことはありますか。
Aさん とうとう来るべきものが来たと思いました。恐らく、建設現場の仕事に従事している人であれば、現場監督の自殺は誰もが予想していたことだろうと思います。現場は激務であり、メンタル面でも追い込まれることが多いですからね。現場監督や施工管理者のなかには、精神をやられ、抗うつの薬を飲む人も少なくありません。今回の現場監督の時間外労働は212時間でしたが、そのせいで心と体を徐々に蝕まれていったのでしょう。
――このような問題が起きるのは、なぜでしょうか。
Aさん 工期に余裕がない、現場の生産性は上がらず、昭和の根性論がまかり通り、発注者に提出する書類が膨大で、翌日の段取りを決めるための案を考えなければならないためです。「工期は命より重い」というシャレにならない言葉もあります。
現場の仕事を工期どおり無事終わらせるために、せめて効率性を考えて仕事をすれば良いのですが、建設業と根性論は相性が良いのです。「できないのは、根性が足りないせい」という昭和の「スポ根」論で乗り切ろうと考える人が多いせいです。そして現場の職人は荒くれ者が多い。現場監督は段取りを職人に説明するのですが、その説明がわかりにくかったりして、なめられると職人から怒鳴られる。「おい、監督、何やっているんだ」とかね。そういうことが積み重ねられていって徐々に心が折れていったのでしょう。それでも職人と仲良くなって教えてもらうというのも、現場監督が成長するためには必要なステップなのです。