柴咲コウが主演するNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』の第31回が6日に放送され、平均視聴率は前回から0.7ポイント減の10.6%(関東地区平均、ビデオリサーチ調べ)だったことがわかった。ドラマとしては井伊家存亡にかかわる山場に差し掛かっているが、視聴率は自己ワーストとなってしまった。
今川の命に従い、井伊家の取りつぶしに直結する徳政令の発令を受け入れた直虎(柴咲)。その裏では、今川にいったん従って時を待ち、徳川が今川領内に進攻してきた際には徳川方について井伊家再興を図ることで小野政次(高橋一生)と話がついていた。ところが疑い深い今川氏真(尾上松也)は取りつぶしだけでは満足せず、井伊家跡取りの虎松(寺田心)の首を取るように政次に命じる。政次はこの命に従うふりをして名もなき子どもを虎松の身代わりとして殺し、その首を差し出した。首をあらためるように命じられた直虎はすべてを察し、首を抱いて涙を流しながら経を唱えた――という展開だった。
井伊家が取りつぶしに遭い、虎松の命が危険にさらされ、直虎と政次の計画通りとはいえ直虎が廃され、家臣の政次が井伊谷の支配者となったという大きな出来事が次から次へと起こった回ではあったのだが、どうにも印象が薄いというのが率直な感想だ。期待しすぎてハードルが上がってしまったのかもしれないが、この重大な局面がこうもあっさりと盛り上がりもなく終わってしまったのかという気持ちでいっぱいだ。
特にずっこけたのは、隠し里に逃れた井伊家の者たちを前に、直虎が政次について「井伊家の敵を演じているが本当は味方だ」と打ち明けた場面だ。ここであっさりネタバラシするくらいなら、今まで必死に隠し通す必要があったのか。劇中の政次と直虎は、なぜこれを他の家臣に隠す必要があるのか途中でわからなくなったまま隠すことだけに心を砕いていたような感じがあったが、実は脚本家自身も理由がよくわからなくなっていたのではないか。
隠すなら最後まで隠し通し、「直虎だけが政次の本心を知っていた」という展開にしてほしかったし、そのほうがドラマ性もあったように思う。結果的に中途半端なところで明かしてしまい、しかも井伊家の人々の大半が薄々気づいていたという展開だったため、ここまで直虎と政次だけの秘密にしてきた脚本の必然性が丸々吹っ飛んでしまった。また、劇中で「政次は、本当はいい人」との認識が井伊家家中に行き渡ったことにより、政次を奸臣として描く実際の井伊家の記録との整合性も取れなくなってしまった。井伊家の家臣たちに誤解されたままでないと、お家の記録に悪人として描かれないと思うが、森下佳子脚本はこのあたりをどう処理するつもりなのだろうか。