ソフトバンクグループ(G)は事業会社なのか、それとも投資会社なのか――。業績の解読がますます難しくなった。
ソフトバンクGは8月7日、2018年3月期の第1四半期(4~6月期)決算(国際会計基準)を発表した。売上高は前年同期比3%増の2兆1860億円、営業利益は同50%増の4792億円。最終利益は同98%減の55億円だった。前年に計上した中国・アリババ集団などの株式売却益2042億円がなくなったため、大幅な最終減益となった。
今期からソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)が連結対象になった。SVFはインターネット関連に出資する巨大ファンドで今年5月、930億ドル(10兆1000億円)規模で発足した。年内に1000億ドルの出資を目指す。
ソフトバンクG会長兼社長の孫正義氏は、“行動する国際的な投資家”ぶりをいかんなく発揮した。
米大統領に当選したトランプ氏といち早く会い、米国へ500億ドルの投資と、新たに5万人の雇用を生み出すと約束した。SVFが、その米国への投資の柱となる。
SVFを連結決算に組み込んだことが営業増益に貢献した。SVF事業は米半導体大手、エヌビディアの株価上昇による評価益を中心とするセグメント営業利益1052億円を叩き出した。5月にファンドの初回出資を完了した際、エヌビディア株式を取得したことを明らかにした。エヌビディアは自動運転車に使う半導体に強みを持ち、SVFは4000億円前後、4.9%出資している。
孫氏は決算発表の記者会見で、SVF事業について「順調にいけば、毎年数千億円の収益増に貢献するのではないかという気がする」と強気の発言をしている。
半面、最終利益は98%も減った。前年同期に英ARMホールディングス(アーム)の買収資金を捻出するため、中国IT大手、アリババの株式の一部を売却したからだ。今期は、その売却益がなくなったことに加え、2571億円のアリババ関連のデリバティブ損失を計上した。
孫氏は2571億円のデリバティブ損失について、アリババ株の変動に損益が左右される仕組みになっていて、前期からの3年間で損失の総額は、利益との相殺で9億ドル(約1000億円)と説明した。この特別損失について、突っ込んだ報道は見当たらない。
第1四半期決算は、投資案件によって巨額の評価益や評価損が出ることを実証したわけだ。このことがソフトバンクGの業績の解読をますます難しくさせている。