神戸製鋼所がアルミ・銅製品や鉄粉、線材などで検査データを改竄していた問題で、不正の対象となった製品を使用している企業が500を超えることが明らかになった。このうち海外は30社以上ある。改竄は子会社、関連会社にも及んでいる。
自動車メーカーはトヨタ自動車、日産自動車、三菱自動車、ホンダ、SUBARU(スバル)など大手5社全社。自動車部品最大手のデンソーもエンジン冷却装置などの部品で使用している。鉄道はJR東日本(東北新幹線「はやぶさ」の一編成の骨組み)、JR東海(新幹線の車両と台車部品)、JR西日本(山陽新幹線などの車両の一部)。航空機・宇宙関連では三菱重工業(開発中の国産ジェット機・MRJの一部、国産ロケット・H2Aの一部)、川崎重工業は航空機の機体の一部と航空用エンジン、IHIは航空機用エンジンの一部。ダイキン工業のエアコンでも使われている。
海外企業では米GM、ボーイング、GE、テスラ、独ダイムラー、英国のロールス・ロイスや欧州のエアバス、大韓航空などだ。
東京電力の福島第2原発3号機の原子炉を冷却する熱交換器に使われる部品に問題の製品が納入されていたが、使用はされていなかったという。防衛省は問題のアルミ製品が航空機や誘導武器、魚雷など防衛整備品に使われていたことを明らかにした。影響は広範に及んでいる。
自動車はリコールの可能性がある。リコールになれば影響は深刻だ。神戸製鋼所の決算は、鉄鋼製品の市況悪化に油圧ショベルの中国での販売低迷が重なり、2017年3月期まで2期連続で最終赤字に陥っていた。今期(18年3月期)は350億円の最終黒字を見込んでいるが、データ改竄の影響は現時点では不明だ。巨額の特別損失を計上するようになれば赤字になる。
神戸製鋼所にとって痛手なのはアルミ・銅事業が稼ぎ頭だったことだ。17年3月期も120億円の利益を稼いでいて、5月の記者会見で川崎博也会長兼社長は「自動車の軽量化という追い風を受け、25年度にはアルミ・銅事業で300億円の利益を出したい」と意気込んでいた。
業績以上に懸念されるのは、供給先の製品を含めて「メイド・イン・ジャパン」の信頼に傷がつくことだ。この損失は計り知れない。日立製作所は英国で受注した高速鉄道の車両本体で使っていたが、「安全性は確認できている」と説明した。米GMは影響調査を開始した。