職場には、大きく分けて二種類の人間がいる。
どんな仕事を任されても、周りの人をぐいぐい巻き込んで着実に目的を達成する人と、障害が現れるたびに停滞して、物事をなかなか前に進められない人だ。
後者をいわゆる「仕事が遅い人」と呼ぶわけだが、では仕事が遅い人とは、具体的に何が「遅い」のだろうか。
■仕事が遅い人に決定的に欠けている力
会社での仕事のほとんどは、社内外の誰かとコミュニケーションをとりながら進めるもの。自分一人で完結する仕事というのは、実は少ない。
ここでいうコミュニケーションとは、上司の決済をもらったり、自分の企画をチームで共有したりといったことだ。ここでダメ出しを食らったり理解を得られないと、仕事は停滞することになる。
つまり「仕事が遅い人」というのは、多かれ少なかれコミュニケーション力に問題があるといえるのだ。
■「世界で最も忙しい社長」を10秒で説得し続けた男の話
一方、「仕事が早い人」は、相手がどんなに忙しい上司でもさっさと承認を取り、プロジェクトを先に進める。当然、関係者すべての時間のロスは減り、信頼される。
『孫社長のYESを10秒で連発した 瞬速プレゼン』(すばる舎刊)の著者、三木雄信氏は、かつてソフトバンクで孫正義氏の秘書を長く務めた人物。
「多忙を極める」と言葉にするのは簡単だが、孫氏の忙しさは強烈だ。分刻みで社外を飛び回ることもあれば、一日中会議室にこもってミーティングをこなすこともあったそう。
となると、決済や承認を取ろうにも、立ち止まって話ができるのは「秒単位」である。メールでのやり取りも「はい」「いいえ」「了解」しか返事がなく、3回以上のやりとりはしない。
つかまえようにもまったくつかまらない孫氏のもとに集まる案件を引き受け、承認や決済をつぎつぎと取りつけていたのが三木氏である。必然的に、氏には約10秒の時間や一度のメールで相手が判断に必要な材料を説明し、承認を得るという高度なコミュニケーションスキルが身につくことになった。
■相手の即断を引き出す6つの超重要ポイント
三木氏は、相手を短時間で説得するための秘訣として以下の6つを挙げている。
・相手が欲しい情報を入れる……「何がどうなのか?(対担当レベル)」「どういう意味なのか?(対管理職レベル)」「どう展開すべきか?(対事業部長レベル)」「なぜ当社がそれをやるべきなのか(対社長・取締役レベル)」と、相手によって必要とする情報が異なるため。
・構造化する……組織内で上の立場になるほど、物事を「全体の構造」に当てはめて理解するため。
・「定義」を決める……同じ言葉でも人によって定義が違うことはままある。事前にキーワードの定義をすり合わせておこう。
・数値化する……相手に確固たる判断基準を与えるために、数字は絶対。
・「つかみ」を工夫する……「この人の言うことは面白そうだぞ」と思わせないと、忙しい人には聞き流されてしまう。
・ワンスライド・ワンメッセージ……資料などは、情報を詰め込みすぎない。