小泉今日子主演のドラマ『監獄のお姫さま』(TBS系)の第8話が5日に放送され、平均視聴率は6.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。
自己ワーストを記録した前回よりは1.1ポイント上昇したが、戻ってきた視聴者をつなぎ止められたかどうかは怪しい。良くも悪くもグイグイ進んできたこれまでの流れが急に悪くなり、明らかにトーンダウンしてしまったからだ。
菅野美穂演じる千夏がセクシーな衣装に着替えてノリノリで踊り、お笑いコンビ「にゃんこスター」の振り付けまで披露した場面は視聴者の話題を呼んだが、助けるふりをして吾郎(伊勢谷友介)に自白させるつもりだったという、なんのひねりもないオチで終了。2人だけの密室劇だったのなら、千夏が裏切るのではないかという緊迫感を視聴者に抱かせることができたと思うが、買い出しに出かけていたカヨ(小泉)たちが途中からその様子をずっと見ていたのだから緊張感のかけらもない。これでは、たとえ千夏が吾郎を助けようとしたところで止められるのは明白であり、最初からオチが見えている。
前回のラストでは、晴海(乙葉)とふたば(満島ひかり)が対決するかに見えたが、それもなし。吾郎が拘束されている現場に駆け付けた晴海は取り乱すこともなく、「正直に真実を話してほしい」と吾郎に迫る。ふたばの正体を知った晴海がどう出るかが盛り上がりのポイントだったと思うが、犯人と対決するどころか犯人に同調してしまうというまさかの展開だ。仲間の中から裏切者が出たのではないかと疑心暗鬼になっていたカヨたちも、ふたばが帰ってきたことで結束を取り戻す。
こうして見ると、千夏が裏切るのではないかと思わせて裏切らず、晴海がふたばと対決するかのように見せかけて何も起こらず、誰かが裏切っているのではないかという心理戦が始まるかのように見えて始まらないという、肩透かしの連続だ。別に視聴者が勝手に予想したわけではなく、いかにもそう見えるように前回種をまいていたのだから質が悪い。第8話は、描いておけば盛り上がったであろうポイントをことごとくつぶした、おもしろみに欠ける回だったとしか言いようがない。もちろん意図的だったとは思うが、これをおもしろいと思う視聴者は決して多くないだろう。
一方で、過去パートではカヨがノートを置き忘れたせいで吾郎への復讐計画がふたばにバレ、やめるようにと強く諭された。これにより、受刑者が再び罪を犯すのをあれほど憎んでいたふたばが、なぜ最終的に復讐計画に加担したのかという大きな謎が生まれた。満島の演技も圧巻で、声を荒らげて真剣に怒ったり、「好きだからもう会いたくないの」と真顔でカヨを諭したりするたびにTwitterに絶賛の声があふれた。これまでも存在感を発揮していたが、今回は特に満島が実質主役の回ではないかと思えたほどだ。ストーリーの行方も、カヨたちの復讐計画そのものや吾郎が本当に罪を犯したのかどうかより、満島演じるふたばの動機や目的は何なのかに、焦点が当たり始めているように見える。ラストに向かってどこを目指していくのか、引き続き注目したい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)