サンリオは6月22日、多摩市のパルテノン多摩大ホールで定時株主総会を開催した。1960年に山梨県の絹製品を販売する外郭団体を独立させ、山梨シルクセンター(現サンリオ)を設立して以来、辻信太郎氏は社長在籍56年目を迎えるが続投した。孫の辻朋邦氏(28)が専務に昇格した。前年に取締役になったばかりだが、一気にナンバー2に躍り出た。創業一族によるトップの座の継承が明確になった。
5月18日に開いたアナリスト説明会は、信太郎氏に代わって朋邦氏が出席。「キャラクターのプロモーションを進めるとともに、参入が遅れているデジタルコンテンツの分野を注力していく。新しいサンリオをつくっていきたい」と語った。
サンリオは新しいキャラクターを次々と打ち出している。新しいキャラをお菓子などにつけるコラボ商品をつくることと、コラボ商品をネットショップで販売することを収益の柱に育てたいとしている。
2018年春にまとめる中期経営計画にどんな具体策が盛り込まれるかが焦点だ。だが、ハローキティをしのぐ人気キャラを生み出すのは至難の業だろう。創業家3代目にとって、とてつもなく荷が重いのではないのか。
主力のライセンスビジネスが減収減益
日経平均株価は2万3000円を突破し、26年ぶりの高値になっているというのに、サンリオの株価は11月6日に年初来安値の1803円をつけた。16年9月につけた安値の1700円が意識され始めている。今年の年初来高値の2364円(2月14日)と比較すると、24%安くなっている。12月1日の終値は1846円(19円安)。この日の安値は1832円(33円安)。
10月10日、18年3月期の業績予想を下方修正した。連結売上高は前期比5%増の657億円の予想から一転、4%減の603億円に引き下げた。営業利益は56%増の108億円を9%減の63億円、純利益は20%増の78億円から26%減の48億円と下方修正した。最終減益は3年連続となる。
当初の予想から54億円の減収、営業利益は45億円、純利益は30億円の、いずれも減益となる。年間配当は80円予想から25円減の55円に減配する。
従来の増益予想から一転して減益となり、失望売りが出た。年間配当を引き下げたのも嫌気された。高い配当利回りが株価の下支えになった面があっただけに、今回の減配は、サンリオの経営が深刻な事態に陥っていると投資家に受け止められた。
18年3月期の第1四半期(17年4月~6月)は惨憺たるものだった。売上高は前年同期比11%減の134億円、営業利益は37%減の12億円、純利益は18%減の10億円。国内事業は6.6億円の営業赤字。主力の物販とライセンスは減収減益。「サンリオピューロランド」のテーマパーク部門だけが増収だった。
海外では自ら商品を企画販売するのではなく、企業にハローキティなど人気キャラクターをライセンス供与して稼ぐビジネスが中心。海外でのライセンスビジネスが収益の柱となっていたが、そのビジネスモデルの見直しが急務となっている。海外事業は2ケタの大幅な減収・減益となった。
それでも、この時点では通期に関しては強気の予想を立てていた。だが、国内では直営店、大手量販店向けの物販が振るわない。米国では、世界最大の通販サイトのアマゾン・ドットコムが小売市場を席巻し、小売チェーンは次々と閉店に追いやられた。玩具チェーン最大手、トイザラスは9月、連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請した。
サンリオがライセンスを供与している米小売チェーン最大手、ウォルマート・ストアーズが苦戦を強いられていることが大きく響いた。
好調なテーマパークや中国、香港、ASEANでのライセンス事業の寄与を見込み、通期の増収・増益を計画していたが、この甘い見通しが見事に外れた格好だ。