リニア中央新幹線の関連工事入札をめぐり、スーパーゼネコン4社が談合を繰り返していたことが発覚した。最初に捜索を受けた大林組が4社の談合を認め、違反を公正取引委員会に自主申告した。課徴金の減免が狙いだ。談合していた4社は一枚岩ではない。大林組が強制捜査後「自首」したのは、株主代表訴訟を回避する狙いもあるといわれている。
「談合の噂は昨年3月頃からあったが、ようやく事件化された。東京地検特捜部の狙う“本丸”は、リニア工事での談合ではない」(法曹関係者)
リニアのルートが正式決定された2011年頃から、将来発注される工事について4社で受注調整することで合意していた疑いがある。「正式に合意したのは14年」と大林組の幹部が供述している。リニア談合を主導したとみられている大林組と大成建設の担当者は私立大学理工学部の同級生。4社の担当者は親密な関係にあった。
東京地検と公取委は、将来発注予定の工区別にスーパーゼネコン4社のイニシャルが割り振られた文書を入手している。「K」は鹿島、「T」は大成、「O」は大林組、「S」は清水建設である。4社は得意分野を担当し、計15件を事前調整していた。4社がそれぞれ受注した工事契約額は600億円で、ほぼ同額である。大成建設は大林組に対して、「南アルプストンネル」の受注を断念するよう求めていたという。実際に同トンネルは大成と鹿島が受注した。
リニア談合に発注元のJR東海の意向が色濃く反映されている、との指摘がある。JR東海は被害者なのか、共犯者の疑いはないのか。柘植康英社長は昨年12月20日の記者会見で「工期を最優先させたい」と語った。
大成のジョイントベンチャー(JV)はリニア名古屋駅工事に先立ち、JR東海から名古屋の新駅ビル「JRゲートタワー」(地下6階地上46階、17年全面開業)を受注。12年から建設工事に入ったが、地下工事が難航するなどして100億円強の赤字が出たという。大成は「JRゲートタワー」の地下に建設予定のリニア新駅「名古屋駅中央工区」の工事を受注すれば赤字を埋め合わせることができると考えていた。ところが、この工区はJR東海が指名競争入札方式にしたことで、複数のJVに参加資格が与えられた。しかも大林組のJVにはJR東海の100%子会社、ジェイアール東海建設(名古屋市)が参加した。
東京地検が偽計業務妨害容疑で大林組を捜索した際に容疑の対象となった、名古屋市の名城非常口新設工事でも、大林組のJVにジェイアール東海建設が入っていた。
「ジェイアール東海建設がJVに入ることは、受注するために有利。工事情報も入る」(スーパーゼネコン幹部)。
ジェイアール東海建設が大林組のJVに入ったことで、大成は名古屋駅中央工区と名城非常口新設工事の受注を断念した格好だ。