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有馬賢治「日本を読み解くマーケティング・パースペクティブ」

テレビ、単なる家具に…「放送時間にテレビの前に座る」習慣の消滅

解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季

テレビ一強時代が終焉し試される企画力

 このような状況から、有馬氏は「今のテレビは家具のひとつになっていて、“集中して見る時代”から“流し見する時代”になったのかもしれない」と話す。もちろん、地上波テレビ局側も集中して見てもらえるヒット番組を制作するために試行錯誤はしている。最近ではテレビ東京の『池の水ぜんぶ抜く』という企画が業界に衝撃を与えた。

「現在、大手メディアはコンプライアンスや炎上を意識せざるを得ないという背景があります。他方、アイディア勝負の『池の水~』のような番組作りは容易ではありません。それに比べてネットテレビのオリジナル番組は、過激な内容や映像に対する自主規制が緩やかなので、視聴者の関心を集める番組を比較的つくりやすいというのが現状です。すると、今後地上波の番組は相当独自性を高めていかないと、いよいよ淘汰されてしまうことになりかねません」(同)

“淘汰される可能性がある”ということは、視聴者からすれば、地上波テレビはインターネットテレビ局も含めた“数多くの映像コンテンツの中のひとつ”にまで成り下がったということだろう。そして、コンテンツ自体の価値が近しいのであれば、より面白い内容を放送、配信する番組が選ばれる。ゆえに、社会的立場から思い切ったことがやりづらい地上波テレビは不利というわけだ。だが、その他の映像コンテンツが台頭することは、地上波テレビ業界にとって悪いことばかりではないようだ。

「今も昔も、『面白ければ見られる』『つまらなければ見られない』という根本的な構造は変わりません。今は見逃し配信などのネット経由のサービスも充実していますので、映像メディアを楽しむ人の分母は確実に増えています。話題にさえなればインターネットなど他のメディアから視聴者を誘導することができる現状は、テレビ業界にとってもある意味で好都合なのではないでしょうか」(同)

 視聴する側からすれば、「テレビだから見ない」「ネットだから見る」という区別はなく、ただ面白いかどうかが視聴するかしないかの判断材料だ。地位にあぐらをかけなくなったテレビ業界。果たしてこれから視聴者を取り戻せるのか、それとも淘汰されてしまうのか。今後数年のテレビ制作者の姿勢に注目したい。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季)

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