フランス・パリが2025年国際博覧会(万博)への立候補を断念した。2025万博開催地は今年11月の博覧会国際事務局(BIE)総会で決定する。
2月7日、大阪府の松井一郎知事はローラン・ピック駐日仏大使と府庁内で会談し、開催国決定に向けて「いろいろとご協力をいただきたい」と依頼した。
万博開催地はパリが最有力とみられていた。パリの撤退により、残っているのはロシアのエカテリンブルグ、アゼルバイジャンのバクーと大阪。俄然、大阪が有利になったという見方が広がっている。だが、そう甘くはないようだ。
松井知事は、万博とカジノを含む統合型リゾート(IR)のセット論を展開。「万博前のIR開業が絶対」だと考えている。しかし、万博前のIR開業には黄信号が灯る。
IRは大問題に
IR実施法案は、国会審議入りしていない。安倍晋三首相の施政方針演説には盛り込まれていたが、公明党内にはカジノ解禁に慎重な意見が依然として根強いためだ。安倍首相にとっても、働き方改革関連法案や憲法改正など懸案事項が別にあるので、IR実施法案は後回しにされる可能性が高い。そのうえ、たとえIR実施法案が成立しても、大阪への誘致がすぐに実現するとは限らない。
「まずは3カ所程度だろう」
政府高官はIRの設置場所についてこう漏らす。2カ所は首都圏、残り1カ所が首都圏以外の地方になる公算が高いという。地方では、沖縄、長崎、和歌山、愛知、北海道なども誘致に手を上げている。1カ所という狭き門で、大阪が選ばれる確率は高くない。
しかも2月20日、大阪は来年のG20開催都市に決定。福岡や愛知とのバトルに勝利した。これには「G20は大阪にするからIRは別の都市で、という首相官邸の意向があるのではないか」(自民党関係者)という見方が出ている。
万博の会場建設費は約1300億円で、国、地元自治体(大阪府・市)、財界で3分の1ずつ分担する。これとは別にインフラ整備費用も必要で、万博だけで730億円以上、IRについては未定である。
この費用について大阪府は「万博とIRセット」とすることで、IRのために日本進出する事業者に負担してもらおうと考えているのだ。裏を返せば、IRが遅れると万博のインフラ整備費はすべて府と市が出さなければいけなくなる。関西財界が負担を求められる可能性も出てくる。