ソニー元幹部が語る「内側からみた、迷走の“本当の”理由と再建策」
(さくら舎/原田節雄)
連結売上高は2008年3月期の8兆8714億円から6兆4932億円へ急降下し、4年間で売上の約4分の3が失われた。09年3月期以来4期連続最終赤字で、その額は12年3月期は4566億円という巨額に膨らみ、11月1日に発表された第2四半期決算も401億円の最終赤字だった。シャープやパナソニックの業績の悪さが衝撃的だったので目立たなくなったが、「世界のソニー」もまた、深刻な業績悪化に見舞われている。
かつて、日本を代表するエクセレントカンパニーだったソニーは、どうしてこんなにダメになってしまったのか?
70年に入社以来40年間ソニーに身を置き、技術系幹部も務めた原田節雄氏は、9月、『ソニー 失われた20年ーー内側から見た無能と希望』(さくら舎)という本を出版し、話題になっている。その原田氏に、
「ソニーをこんな状態にしたのは、いったい誰の責任なのか?」
「どこに問題があったのか?」
などについて聞いた。
●ソニーは異質な会社だったから、苦しんでいる
ーーソニーといえば、世界に通用する技術を持ち、斬新なヒット商品を出しては話題を提供し、宣伝が上手でスマートで国際的というイメージがあり、「日本の普通の会社とは違う」と特別視される存在でした。40年在籍されて、実際はどうなんでしょうか?
原田節雄氏(以下、原田) 盛田(昭夫)さんの時代のソニーは、いろいろ失敗を繰り返しながら一生懸命に仕事に取り組む武骨な会社でした。本田宗一郎さんの頃のホンダも多分そうでしょう。それを出井(伸之、元CEO)さんの時代にやらなくなり、うわべだけに走って、恐らくそれが「スマート」と言われるゆえんでしょうか。
しかし、経営はスマートにはできませんよ。ただ、「ソニー異質論」はその通りで、日立、三菱電機、東芝は今も官公庁需要が大きい会社ですが、ソニーは官需に頼らず自由なビジネスをして海外に出て行くようになりました。国内、海外を問わず一般コンシューマー(消費者)が楽しめる製品をつくるというコンセプトを確立して、盛田さんの時代にはすでにドメスティックな会社ではなく、日本企業としては異質だったと思います。外国部の社員は永住覚悟で欧米に出ていき、製品をどんどん売って、それが国際的なイメージになったのでしょうが、出井さんの時代から、逆に徐々にドメスティックになったように感じます。
ーーソニーは異質な会社だった頃のほうがよかった、ということですか?
原田 いや、異質は本当はよくないんです。今のように不況の時代になると、内需で養っていける日立、三菱電機、東芝のほうが潤っています。また、異質なソニーのような会社は輸出が拡大した時代はよかったのですが、今は苦しんでいます。私は、ソニーも内需と外需、官需と民需の両方を、部署を違えながらバランスよく持つべきだったと思います。官需のような安定した部門と、新たにチャレンジするベンチャー的な部門の両方を持つというのは、経営の原理原則ではないでしょうか。ある時は一方に力を入れて、またある時は別のほうに力を入れればいいんです。
ーーそうしなかったから4期連続最終赤字です。今期は、中間期は赤字でも通年の本決算は黒字になる見通しを変えていませんが。
原田 赤字が続く中でトップが非常に高い給料を取り続けては、誰が見てもおかしいと思います。だから黒字にしたいんでしょう。
●期待していた平井社長に裏切られた
ーー今のトップは平井(一夫)社長ですが、彼はソニーを立て直せると思いますか?