これまでも噂がくすぶっていたが、4月1日に社名をNHNジャパンからLINEに変更したことで、思惑に拍車がかかっている格好だ。もうひとつの事業の柱であるゲーム事業は、新たに分割したNHNジャパンに移管。株式市場では、爆発的に拡大しているLINEを社名にしたことで、株式上場への布石ではないかとの見方が広がっている。
かつて、SNSサービス「mixi(ミクシィ)」を展開するのはイー・マーキュリーだったが、サービス名のmixiに社名を変え、その後株式上場に進んでいる。
オンラインゲームで知られるNHNジャパンの名前を商号に残すことで、ゲーム部門の知名度も維持することができる。
LINEはスマートフォンなどで利用できるアプリケーションソフトで、2013年1月18日付の公式Twitter(ツイッター)で、登録ユーザー数が1億人を突破したと発表している。サービス開始からわずか1年7カ月での達成で、関係者によれば、「これはフェイスブックの4年6カ月、ツイッターの4年1カ月を上回るスピード」としている。登録すれば、LINEに加入している知人とチャットができ、インターネット電話も使える。利便性の高さと操作の容易さもあり、若年層だけでなく、中高年層の取り込みにも成功している。1対1のコミュニケーションができ、フェイスブックのような開かれた情報共有を嫌うユーザーの、安心感も誘っているようだ。電話番号を預けるだけという利便性の半面、個人情報の流出懸念を指摘する声もある。
業績は開示されていないので不明だが、赤字との見方が多い。チャットにつけるスタンプや、今後は広告収入などが収益モデルになるとみられている。
上場計画なども明らかにされているわけではないが、仮に株式上場となれば今年最大の人気案件になることが必定。SNSでこれだけ爆発的に普及している成長性に加え、日本人が開発したことも人気に拍車をかける可能性が高い。元のサービスは韓国だが、現在の仕組みにしたのは日本人となっているもよう。
●SNS企業にも波及の可能性も
ツイッターは上場していないが、出資しているデジタルガレージが、SNS関連としてジャスダック市場で株価が急騰した経緯がある。本体の上場となれば、ブックビル(需要予測)期間から買い需要が膨れ上がる可能性がある。
また、「モバゲー」のディーエヌエー(DeNA)、「GREE」を運営するグリーのほか、ソーシャルゲームのKLab、「パズドラ」のガンホーオンラインなどへの波及効果が出る可能性もある。
市場でささやかれるLINEの上場。可能性は高くないとの声も聞かれるが、何度も噂が出ること自体、期待の高さとみることができそう。実現の有無も含め、今年後半の話題となり続けそうだ。
(文=和島英樹/ラジオNIKKEI記者)