だが、なぜかみずほは大きく叩かれるものの、問題の根幹にいるオリコを批判する声はあまり喧伝されない。「反社会的勢力(反社)を審査でチェックできず、みずほが暴力団に融資する結果を招いたオリコの責任は問われていないのはいかがなものか」(メガバンク幹部)といぶかしがる銀行マンは数多い。
オリコの対外説明は、自社の反社データを反映したものでチェックも行き届いていること、問題となった提携ローンは特異なスキームで他の金融保証商品とは異なること、業務改善命令はみずほ銀行が反社との取引を放置したことによるものであることを強調している。自社には瑕疵はないというスタンスだ。
だが、問題となった融資はオリコの審査をすり抜けていた事実は動かせない。提携ローンの仕組みでは、みずほが融資先に反社が紛れ込んでいた事実を確認するのは、週単位で融資先リストがみずほに送られた時点。この時にはすでにオリコから顧客に代理貸しというかたちで資金は渡っている。この時間のずれに盲点があった。
実は、オリコとみずほが提携したローンは1990年代央から発売されているが、2008年の割賦販売法の改正がきっかけに拡販した商品だ。信販会社が審査・保証し、銀行が融資するスキーム(キャプティブローン)は、割販法の改正に伴う規制強化の適用対象外とされ、債権回収も信販会社任せ。小口金融に伴うコスト増を抑えたい銀行等のニーズに合致した。だが、その穴を巧みに突いたのは反社という皮肉な結果を招いた。
問題が拡大する中、信販会社を所管する経済産業省は、オリコを含めた提携ローンを手掛けている信販会社18社に対し、今月22日を期限に反社の排除に向けた社内体制や審査実態などを報告するよう指示を出した。だが、提携ローンが抱える問題点に切り込む意欲は見えない。
オリコの囲い込み戦略
そもそも、なぜオリコがオートローンに強く、157万人もの顧客を抱える一大市場を築き得たのかは知られていない。そこには中古車ディーラーへのオリコの戦略的な囲い込みがあった。
中古車ディーラーでオリコの提携ローンを使って車を購入しようと思えば、手続きは簡単だ。氏名、生年月日、住所、勤務先、年収、車体価格を書き込んだ申込書を、身分証明書代わりの運転免許証のコピーとともにファックスで中古車販売店の店頭から送るだけ。すると15分ほどで融資の可否が下りる。この迅速な対応がオリコのウリで、業界ナンバーワンの地位を築いた。
では、どうやってこれほどの迅速な対応ができるのか?
その背景についてあるメガバンクOBは次のように指摘する。
「中古車販売店は中小・零細企業が多く、自社でローンに関する事務処理を賄えないため、各県ごとに中古車事業協同組合を組織し、ローン事務を委託している。実はその協同組合に少なくとも数年前まではオリコの社員が手弁当で出向して、その事務を一手に担っていた。まさにオリコの戦略勝ちでした」
オリコのオートローンの審査申請は各事業協同組合宛てに送られ、そこに出向していたオリコの社員が対応することで、短時間での回答が可能というわけだ。オリコはこうした地道な努力の積み重ねにより業界ナンバーワンの地位を掴んだ。そうやすやすとこの商品を手離すわけにはいかないことは確かだ。
オリコが10月16日に経済産業省に提出した第一次の報告書には、次のように明記されている。
「当社では、個別信用購入あっせん契約について、以前は加盟店に対する営業推進活動と申込みの審査を同一の営業店で実施しておりましたが、業務の生産性向上と与信の適正化を図ることを目的に営業部門と審査部門の分離を進め、全国の約80の営業店にあった審査部門を10のセンターに集約し、営業部門が審査に関与できない体制を構築し、顧客や加盟店との癒着は極めて困難な体制となっております」
営業部門と審査部門の分離は図られており、顧客や加盟店との癒着はないことは事実であろうが、オートローンで業界ナンバーワンの地位を築き上げた背景には、中古車販売事業者とオリコが実質的に一体であった過去が隠されている。
(文=編集部)