しかし、それだけでは終わらない。消費税率は10%では済まないのだ。『税務署が隠したい増税の正体』(山田順/文春新書)によれば、アメリカの意向が強く反映されるといわれる世界金融安定化機関・IMF(国際通貨基金)は、政府債務残高が膨らみ続ける日本に財政再建を求め、「日本の消費税は15%まで引き上げろと勧告して」いるという。
また、日本経団連も、08年10月に『税・財政・社会保障制度の一体改革に関する提言』をとりまとめた際、「25年度までに17%」という目標を打ち出している。
6年後の20年には東京オリンピックが開催されるが、団塊の世代が70代に突入し、医療費も介護保険料も激増する。このため、政府与党内では、消費税率を20年までに15~20%にまで引き上げる必要があるという意見もある。
「消費税率を欧州諸国と同じく20%まで上げるとすると、年収300万円以下の若年世代で年約40万円、年収500万円の中年サラリーマン世代で年約60万円の負担増になるという試算がある。これでは生活が崩壊してしまい、オリンピックを観戦する余裕すらなくなるだろう」(同書より)
●消費税以外も増税、“重税国家”に
さらに、昨夏まで官邸内に設置されていた社会保障制度改革国民会議では、安倍晋三首相のブレーンとして知られる民間委員の伊藤元重・東京大学教授が社会保障費の財源として「死亡消費税」を提唱したという。
「これは恐るべき税金で、消費税という以上、国民全員にかかる。人が死んだときに払う税金に相続税があるが、(略)主に富裕層から取り立てる税金だ。しかし、死亡消費税は『死亡+消費税』というネーミングからわかるように国民全員にかかり、死ぬときに財産から一定の税率を“社会保障精算税”として国に納めさせるというものだ」(同)
現在、国民が保有している個人金融資産は約1571兆円(13年3月末現在)。このうちの1000兆円近くは、団塊の世代をはじめとする65歳以上の高齢者が保有している。
「そこで死亡消費税の税率を5%とすれば50兆円、10%とすれば、政府には100兆円のお金が自動的に入ってくることになる」(同)
「死亡消費税」が現実化しなくても、相続税は15年1月1日より、基礎控除が縮小され(「5000万円+<1000万円×法定相続人の数>」→「3000万円+<600万円×法定相続人の数>」)、最高税率が引き上げられる(課税標準3億円超50%→同6億円超55%)。都心部では4人に1人が納税者になるという。