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武田薬品、なぜ緊迫?創業家とOBが異例の質問状 外国人社長登用、主力品で巨額賠償…

文=編集部
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武田薬品、なぜ緊迫?創業家とOBが異例の質問状 外国人社長登用、主力品で巨額賠償…の画像1武田薬品工業東京本社(「Wikipedia」より/Lombroso)
 今年の株主総会で注目を集めている企業のひとつが、6月27日に株主総会を開催する武田薬品工業だ。総会に先立ち、創業家一族とOB株主が、クリストフ・ウェバー最高執行責任者(COO)の社長就任に異議を唱える質問状を提出しているからだ。

 株主総会後に開かれる臨時取締役会で、ウェバー氏は社長兼COOに選任される予定で、長谷川閑史社長兼最高経営責任者(CEO)は会長兼CEOに就く。フランス人のウェバー氏は、武田の233年の歴史で初の外国人社長になる。その人事に武田家など創業家一族が待ったをかけた格好となり、社内外が騒然となった。質問状の提出者は112人で、大半は役員OBだが、創業家一族も10人以上、名を連ねている。

 質問状の内容は7項目だ。「ウェバー氏が社長になり武田薬品が海外の有力大手に買収される事態になれば、極めて優良な創薬技術が国外に流出する可能性がある」と警告。ウェバー氏の社長就任を「外資の乗っ取り」と断じた。さらに質問状は、「2兆円のムダ使い」と社内外から批判を集めている、長谷川氏が進めた米バイオ企業ミレニアム・ファーマシューティカルズの買収(買収額約8000億円)とスイスの製薬会社ナイコメッドの買収(同約1兆1000億円)の失敗に対する責任の所在を尋ねている。

 武田の業績は2014年3月期に4期ぶりに営業増益に転じたが、利益の絶対額はピークだった07年3月期の3分1だ。

 そんな中で、主力医薬品である糖尿病薬アクトスに異常事態が発生した。発がんリスクがあることを隠していたとして、米連邦地裁が4月に武田に60億ドル(約6000億円)の賠償を命じる陪審評決を出した。質問状は陪審評決への対処と責任の所在についても尋ねている。

●役員OBが現経営陣批判に至った背景

 役員OBが現経営陣に批判的な姿勢をとるようになった引き金は、「日本人を後継者にする」と公言していた長谷川氏が13年11月、ウェバー氏を後継者にすると公表したことだ。創業家一族で前社長の武田國男氏が、ある大手製薬会社の幹部に「武田を成長させてくれと頼んだが、外国人に売り渡せとは言っていない」と漏らしたとも一部で報じられた。ちなみに國男氏は質問状に名を連ねてはいない。長谷川氏は株主総会で質問状への回答をするが、創業家とOBが“物言う株主”として集中砲火を浴びせるのは確実とみられている。

 質問状は総会の決議事項ではないが、経営に及ぼす影響は大きい。長谷川氏とウェバー氏の取締役選任に、どのくらい反対票が出るかに注目が集まる。賛成票が60%台の前半にまで落ちれば、事実上の不信任である。今後の経営運営の重石になることは避けられない。
(文=編集部)

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