これを受けてJR北海道は、函館線大沼駅(北海道七飯町)での貨物列車脱線事故直後に数値を改ざんした函館保線所大沼保線管理室の2人を懲戒解雇。函館保線所所長など3人の上司を諭旨解雇とするなど関連会社を含めて75人を処分した。改ざんは管理職の指示や本社社員の関与など組織的で、担当者間で改ざんの手口を引き継ぐなど常態化していた。
JR北海道の経営の立て直しは待ったなしだが、野島社長は辞任を否定した。21日の閣議後の記者会見で太田昭宏国土交通相は「経営陣に求められている責任は、今回の措置に着実に取り組むことだ」とし、トップの交代を促すことはしなかった。政府・与党はJRグループや地元北海道の経済界からトップを迎え入れるべく人選したが、誰も引き受けない。JR東日本も13年11月に技術系管理職8人を派遣したが、経営トップを送り込む気はないとみられている。
民営化前後に採用を一時中止した影響で、野島社長に続く世代に人材がいない。JR北海道の元社長で、いまだに社内に大きな影響力を持つ坂本真一相談役が1月15日、自殺したことが経営の混乱に拍車をかけている。野島氏を社長に押し上げたのは坂本相談役であったことも手伝い、野島社長も自ら辞任するとは口が裂けても言えない状況にある。
国交省も「小池明夫会長、野島誠社長を同時に更迭し、新年度(4月)から新しい経営体制で再スタートを切る」という目くろみが崩れたことを認めている。国交省が21日に示した第三者委員会(安全対策監視委員会)の設立などの対策は、安全運行の確保が主眼であり、経営陣の刷新は遠のいた。
●内部調査結果公表でも深まる不信
野島社長の記者会見では、「身内の調査で十分なのか」と公表結果の信憑性を疑問視する声が記者から上がった。保線担当者795人への聞き取り調査の結果、16%の129人が「改ざんの経験がある」と認めたが、関係者の間では「本当は、もっと多いのではないのか」と疑う見方も広まっている。