5月30日放送の報道番組『クローズアップ現代+』(NHK)に出演した東洋大学教授の竹中平蔵氏の言動がインターネット上で炎上している。
同番組では、「議論白熱!働き方改革法案~最大の焦点“高プロ制度”の行方~」というテーマで働き方改革関連法案を取り上げ、同法案のなかで最大の焦点になっている「高度プロフェッショナル制度」(以下、高プロ)について議論が行われた。
高プロとは、労働規制を緩和する新たな仕組みのことで、一部の高年収の専門職は労働時間規制の対象から外され、残業や深夜・休日労働をしても割増賃金が支払われなくなる。厚生労働省は「自分で働く時間を調整できる人は、労働時間に縛られず柔軟に働くことができる」と説明しているが、野党は「残業代ゼロ法案」と批判している。
同番組では、労災認定された過労死の件数を示すなどして、「労働生産性を高めていくこと」と「労働者の健康を守ること」の両立について、有識者が議論を交わした。賛成派には、竹中氏とクラウドワークス社長の吉田浩一郎氏。反対派には、法政大学教授の上西充子氏と、弁護士で日本労働弁護団幹事長の棗(なつめ)一郎氏。
棗氏は「労働時間を短くすれば生産性は上がっていく」「世界共通のルール内で戦っていけばいいのであって、日本だけ規制を外して、こういうものを取り入れていけばいいという議論は間違っている」と反対の根拠を示した。
一方、竹中氏は「規制を外すのではなく、規制の仕方を変えるんです」「労働者の権利を守るのは大事です、命は大事です。でもその範囲で、しっかりと変えるべきところは変えていかなければならない」「これを入れていかないと、日本の明日はない」「適用する人が1%じゃなくて、もっともっと増えていかないと日本の経済は強くなっていかない」と必要性を訴えた。
高プロでは、健康を確保するために4週間で4日以上かつ年間104日の休日を取得することが定められている。これについて、竹中氏は「ほとんど完全週休2日制」「4週間で必ず4日取るというのはものすごく厳しい規制」と持論を述べ、棗氏は「これで労働者の健康が守れる保証はない」「4週間28日のうち4日間をまとめて休ませれば、残りは24時間24日間働けという業務命令も合法になるので、ブラック企業が利用しないとも限らない」と警鐘を鳴らした。
ネット上では「竹中マジでヤバい。派遣法のときと同様に高プロが拡大することで得する側の人間だからなぁ」「『高プロ対象をもっと増やしたい』って口を滑らせましたね」「結局、死人が出ようと経済成長すればいいってことか」といった声があがっている。
「自分だけ儲かればいいのか」
竹中氏といえば、小泉純一郎政権下で閣僚を務め、自身が推進した労働者派遣法の規制緩和によって非正規労働者が増え、経済格差が拡大したという経緯がある。そのため、「竹中のせいで派遣切りやらワープア(ワーキングプア)やら、どれだけの悲劇が生まれたか」「二度と騙されない」といった意見も見られる。