2月4日にNHKが「森友学園問題 立民・共産の議員の発言に工事業者反論」と報じた内容が、政治的公正性を欠いたものであったことは、すでに当サイトでお伝えした。その後も3月1日、労働統計の不正データ操作をめぐり、立憲民主党や無所属クラブ他の野党を代表して小川淳也衆院議員が、国会で根本匠厚労相の不信任決議案の主旨説明を行ったが、NHKはその主旨説明の内容をほとんど伝えず、まるで小川議員がコップの水を飲んでばかりいるように編集して報道した。インターネット上でも、NHKの悪意ある報道に批判が集まっている。
NHKは昨年、森友問題でスクープを連発した相澤冬樹記者を現場から外すことによって、同記者を退職においやった。これらの問題に共通するのは、NHKが現政権に批判的な報道を抑え、批判する者を中傷するという不公正な対応である。NHKはいつから安倍政権の広報機関になったのか。放送法からも逸脱した姿勢に、すでに市民団体「森友ごみ問題を考える会」は、2月4日の報道に対して、放送法に基づき訂正報道と謝罪を求めた苦情(処理)を提出する準備をしている。本報告では、引き続き森友問題とそのNHK報道問題を取り上げたい。
衆議院委員会で、国は偽装の事実を初めて認める
筆者は当サイトで前回、森友問題をめぐりNHKが、工事業者(藤原工業株式会社)が国土交通省への回答書で写真偽装の事実を認めたという重大事実を報じず、さらに藤原工業が土壌改良工事を行い大量のごみを掘削したということが虚偽だったことを指摘した。2月27日に開催された衆議院財務金融委員会で立憲民主党の川内博史議員は、国交省の担当職員にその写真偽装問題で、「(試掘写真の)7番、10番、11番の写真は、(別の試掘穴と記載されているが)同じ試掘穴ではないか?」と質問し、国交省職員は「これら3枚の写真は、同一の試掘穴の写真と思われます」と答弁した。
写真NO7の一部を拡大して、写真NO10やNO11というまったく別の試掘穴のように見せる加工を行っていた。映像専門家によると、藤原工業が言うように、何枚か写っていた写真を取り間違えたというものではなく、面倒な加工を行い、別の写真であるように見せかけていた。明らかに意識的な加工、写真偽装が行われていた。業者に続き、国も国会で初めて認めたのである。
「8億2000万円の値引きの唯一の根拠文書」(川内議員)である写真資料の偽装を国が国会で認めた意味は大きい。偽装内容が含まれている資料は証拠としての価値を持たず、8億円の値引きの唯一の根拠がなくなったということができる。写真偽装を国が認めることにより、森友問題の核心点である8億円値引きの根拠がなかったことが、公の事実になりつつあるといえる。
そこで果たした野党の役割は、賞賛されるべきだが、NHKは賞賛するどころか、反対に180度異なるかたちで報道した。「野党議員の発言に」「工事業者が反論した」として、あたかも野党議員が間違いを犯したかのように報道したのである。工事業者の発言の真偽を確かめることもなく、また森友問題の利権への関わりを検証することなく、まるで工事業者が公平な発言をしたかのように、野党批判の材料として使ったのである。