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『いだてん』視聴率浮上の兆しすらなし…「わかりにくい」「つまらない」根本的原因

文=吉川織部/ドラマウォッチャー

 NHK大河ドラマ『いだてん』の第15話が21日に放送され、平均視聴率は前回から0.9ポイント減の8.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。もはや1桁台が「定位置」となってしまい、なかなか浮上の兆しは見えない。

 現在放送されているのは、金栗四三(中村勘九郎)が日本人として初めてオリンピックに挑んだ第1部「ストックホルム大会編」に次ぐ第2部。だが、この第2部でいったい何が描かれるのかは、あまりはっきりと視聴者に提示されていない。連続ドラマなのだから事前にストーリーが明かされないのは当たり前なのだが、このことが視聴者に「わかりにくさ」や「つまらなさ」を感じさせているように思えてならない。

 ほとんどの大河ドラマは、最初から終着点が見えている。織田信長が本能寺で死ぬことは誰でも知っているし、徳川家康が豊臣家を滅ぼして幕府を開くこともみんなが知っている。『八重の桜』や『おんな城主直虎』など、知名度が高くない人物を主人公に据えた作品もあったが、こうした作品には「激動の時代でどう生き抜くか」というドキドキ感が伴っていたように思う。

 だが、『いだてん』は、そのどちらにも分類されない。大河ドラマの題材になるとあって関連本を買った人はいるだろうが、それを除けば金栗四三の生涯に詳しい人はほとんどいない。インターネットで調べても、オリンピックでは結果を残せなかったことくらいしかわからない。

 だからといって、わざわざドラマ化してそんなつまらない結末を描くとも思えない。このドラマのもう一人の主人公である田畑政治(阿部サダヲ)へのバトンタッチがどのようになされるのかも不明だ。つまり、終着点が見えないのだ。だからといって、先が見えないドキドキ感があるかといえばそうでもない。戦国時代や幕末の人々とは違い、金栗四三は別に死と隣り合わせなわけではないからだ。

 つまり『いだてん』は、「終着点が見えないが、それによるドキドキ感があるわけでもない」作品になってしまっている。第一部は、そうではなかった。ストックホルムオリンピックに出場するという明確な目的、もしくは終着点があったからだ。だが、第2部ではそれがまったく見えない。そのため視聴者は「今見せられているエピソードに、いったいなんの意味があるのか」と疑問に感じてしまい、結果的に「意味がわからなくてつまらなかった」と感じてしまうのだ。

 第15話は、ほぼ全編、このような「意味のわからないエピソード」に終始した。四三と春野スヤ(綾瀬はるか)が夫婦になったこと自体は史実であるが、そこに至る過程を無理にこねくり回したのも、そのひとつ。詳細は省くが、「すんなり夫婦になればいいじゃないか」との思いを多くの視聴者に抱かせてしまった。

 後に古今亭志ん生(ビートたけし)となる美濃部孝蔵(森山未來)についても、意味のわからない展開が続いた。巡業先の浜松の寄席にいる「ちいちゃん(片山萌美)」なる女性をめぐって師匠とケンカしたというエピソードが突然描かれたのだが、なんのためにそんな話を見せられたのか、さっぱりわからない。そもそも『いだてん』で古今亭志ん生の若き日を描くこと自体の終着点が視聴者にはまったく見えていないのだから、そんな状況でむやみに孝蔵のエピソードを広げられても、「で、なんの意味があるの?」としか思えない。

 孝蔵については、浜松の寄席で「まーちゃん」なる少年に出会い、その後まーちゃんが海で水泳の練習をしているのを見かけたというエピソードも描かれた。この「まーちゃん」が『いだてん』の後半の主人公である田畑政治の少年時代であることはほぼ間違いないが、これに気付いた視聴者はどれだけいただろうか。気付かなかった視聴者が悪いと言いたいのではない。「わかる人にはわかる」演出を採用した制作側が全面的に悪い。

 孝蔵が「まーちゃん」に出会うエピソードは、これまで第三者であった志ん生が、少なくとも主人公のひとりと接点があったことを明らかにする、とても重要な要素だ。だから、「わかる人にはわかる」ではよくない。「この『まーちゃん』こそ後の田畑政治です」というナレーションが一言なければならない。そうでなければ、このエピソードは視聴者にとってなんの意味も持たない、単なる時間の無駄になってしまうからだ。インターネット上で視聴者の反応を見ても、放送を見て「まーちゃん」が田畑政治であることに気付いた人はかなり少ないようだ。

 次回からは、「四三をはじめとする日本人アスリートがベルリンオリンピックを目指す」という話の軸が少しは明確になるようだ。これがいくらかでも「わかりやすさ」につながることを望む。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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