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あのサマンサタバサの経営が、トンデモナイ状況になっていた…なぜ20代女子が離れた?

文・取材=A4studio
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サマンサタバサ 表参道GATES ポップアップ デジタルストア(写真:アフロ)

 1994年に設立され、主に女性向けバッグを手がけてきたサマンサタバサジャパンリミテッド。ヒルトン姉妹やミランダ・カー、ビヨンセなど数々の海外人気タレントを広告に起用し、日本発祥のドメスティックブランドでありながら、20代女子をコア層として海外ハイブランドにも負けず劣らずの知名度と人気を誇っていた。しかし、近年の雲行きは怪しいようだ。

 同社の2019年2月期の連結業績は、売上高が277億4400万円(前年同期比13.7%減)と落ち込んでいる。それだけではなく、営業利益は6億6400万円の黒字(前年同期は16億5300万円の赤字)、経常利益は6億1900万円の黒字(同17億3600万円の赤字)となっているが、当期純利益は13億3,700万円の赤字で、3期連続の最終赤字となった。

 業績不振を受け、同社創業者である寺田和正代表取締役兼社長は4月に退任。後任には専務取締役だった藤田雅章氏が就いており、経営体制にも大きな変化が生じている。

 サマンサタバサの最近の失速はいったい何に起因するものなのか。どうして20代女子の支持率が下がってきてしまっているのか。VMIパートナーズ合同会社代表で、ファッション事業の戦略構築を専門とする黒川智生氏に、サマンサタバサの現状とこれからについて解説してもらった。

有名人を使った大々的なPRの成功で一時代を築いた

 まず、かつてサマンサタバサが一時代を築くことができた理由について、黒川氏はこう分析する。

「かつてサマンサタバサが人々の支持を集められた理由は、“エレガンス系”や“モテ系”のファッションが好きな若い女性をターゲットとしながら、そのとき国内で注目されていた著名人や、日本でも人気の高かった海外タレントを起用して、大々的な広告展開を仕掛けていたからです。ただ商品を着用してもらうだけではなく、その人のライフスタイルとともに紹介するといった方法も功を奏しました」(黒川氏)

 とはいえ、3期連続の最終赤字という現実は、ブランドとして窮地に立たされていると見ていいだろう。サマンサタバサがここまで追い込まれてしまった背景には、どのような時代の変化があるのだろうか。

「そもそもターゲットとなる顧客の生活スタイルが変わってきていますし、ファッションにおいても、顧客が求める商品がカジュアル化・スポーツ化してきています。たとえば、それまでバッグを使っていた人がリュックに切り替えるなどしており、サマンサタバサがこれまで得意としてきたエレガンス系やモテ系路線とは、世間の需要が噛み合わなくなってきたのではないでしょうか。

 もっとも、サマンサタバサもそういった流れに対し、夏向けにかごバッグや透明なアイテムを発売するなどの新しい取り組みをしています。ただ、もともとの得意分野ではないので、それらのアイテム自体が強い訴求力を持っているというわけでもありません。ファッション業界ではブランドごとに得意なものは限られてきますから、顧客のスタイルの変化に対応しきれなければ、今回のサマンサタバサのような結果を招いてしまっても不思議ではないでしょう」(同)

高粗利・高経費型という経営スタイルは時代遅れ?

 続いて黒川氏は、サマンサタバサの経営体制における問題点も指摘する。

「各企業にはそれぞれの経営スタイルがありますが、サマンサタバサの場合は高い粗利率を設定して、その利益を宣伝広告費や出店費用に多く使っていくという、高粗利・高経費型の経営です。しかし私には、このやり方にも限界があるように思えます。

 今は、ゾゾタウンなどの通販サイトで商品キーワードを入れて検索すると、すぐに類似のアイテムがいくつも出てきて、値段や仕様を簡単に比較できる時代です。となると、同じようなアイテムでも単純に安いほうを選ぶ人もいるでしょうし、サマンサタバサのように高粗利が前提のブランドでは柔軟な対応を取るのが難しいのでしょう」(同)

 近年は特に経済的に苦しんでいる20代女子が増えているため、かつてサマンサタバサを支持していた年代ほど、同じようなアイテムであれば安いほうを購入するという消費者が増えているのかもしれない。

 そしてサマンサタバサには、冒頭でも触れたとおり、創業者の寺田社長の退任というトピックもあった。寺田氏が4月の決算説明会で自ら語ったところによると、創業者に頼ってしまいがちな企業風土を改革する目的があるようだが、これを黒川氏はどう見るのか。

「創業者を社員たちが頼るというのはどこの会社でも同じことだと思いますが、ひとつの企業の強みはそんなにたくさんあるものではないでしょうし、今までの経営体制で出せる長所にも限界があったのではないでしょうか。寺田氏の退任にはもちろん、新しい体制で改革を進めていこうという意図があるはずです。とはいえ先ほども申し上げたように、商品開発における課題も山積していますから、それを今の需要に合わせて変えていくのは一筋縄ではいかないでしょう。財務諸表にある商品回転率に着目すると理解できます。

 サマンサタバサは毎月の売上状況が詳しく開示されているわけではないため、これ以上に具体的なことを言うのは難しいところですが、顧客の立場からしてみると、商品ラインナップに“今”にハマった魅力的な商品、おもしろい商品が並んでくれば店舗に足を運びますし、そうでなければ行かない。シンプルなことですが、それが顧客の共通の感覚だろうと思います」(同)

 “20代女子のマストバッグ”の地位に返り咲けるのか

 サマンサタバサの公式オンラインショップでは現在、アニメ『カードキャプターさくら』やサッカーチームの横浜F・マリノス、女優の玉城ティナなど、さまざまな分野とのコラボ商品が目立つ。これも業績回復の策といったところなのだろうか。

「確かに、ここ最近はコラボ商品を特に増やしてきているようです。ただ、コラボ自体はサマンサタバサに限らず、ほかのブランドでも以前からずっとやってきていることですから、コラボだけで世間の話題を集めようというのは、なかなか難しいのではないでしょうか。その商品が売れるのかどうかは、デザインの問題や、販売員と顧客との信頼関係など、複数の要因によって変わってきますからね。

 結局、これまでサマンサタバサのやってきたことがいいとか悪いとか、それだけの話ではないのです。たとえば今は、サマンサタバサよりもっと高級なブランドバッグをレンタルできる新サービスも注目を集めていますので、そうやって状況が変化し続けるなかで、ブランドと時代との相性というものもあるでしょう。

 私としては、こういう洋服に合うのはこういうバッグだという具体的な提案を、サマンサタバサはもっと増やせばいいのではないかと思います。そのうえで値段設定を見直したり、同じ商品を売るにしても顧客へのアプローチの仕方を変えてみたりと、まだまだやりようはあるのではないでしょうか」(同)

 日々目まぐるしく移り変わっていく時代や人々のライフスタイルの変化に対応しきれず、業績不振に苦しんでいるファッションブランドは、サマンサタバサだけではないだろう。苦境に立たされたときにどのような動きをするか次第で、未来はよくも悪くも変わっていく。今後、同社がファッション業界で返り咲く日を心待ちにしたい。

A4studio

A4studio

エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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