鳴り物入りでキャッシュレス・ポイント還元事業がスタートしたが、キャッシュレスに舵を切りたいのは国ばかりではなく、銀行も同じである。現金を扱うATM維持コストの重さにあえぎ、自行ATM自体を減らす方向に進んでいるからだ。
野村総合研究所の2018年のレポートによると、ATM運用にかかわるコストは年間約7000億円にもなる(「キャッシュレス化推進に向けた国内外の現状認識」より)。17年には、新生銀行が行内のATMをセブン銀行ATMに置き換えた。あおぞら銀行も、18年よりゆうちょ銀行ATMへと移行している。
メガバンク自体も動きを模索しており、三菱UFJ銀行と三井住友銀行は19年9月22日より店舗外ATMの共同利用を開始。台数自体が減少していく可能性は高い。
ATMで現金を下ろしてもらうより、デビットカードやスマートフォンのデビットアプリを使ってほしいというのが銀行の本音だろう。マイナス金利政策もあり、すっかり儲からなくなった銀行ビジネスがコストカット一択に動くしかないのは理解はできる。
しかし、自行ATMがなくなることで利用者にとって大きなデメリットがあることはあまり言われていない。銀行側もあえて口にしない。ゆうちょやセブン銀行ATM、そしてコンビニATMにすべてが置き換わると何が起きるかを述べていきたいと思う。
記帳ができず小銭が下ろせなくなる?
まず、自行ATMでないと通帳の記帳はできない。昨今は電子通帳だけで不便がないという人もいるが、仕事の都合もありデジタルではなく紙で残したい人も多いだろう。自行ATMがなくなると、記帳をしたい人は窓口に行くことになる。
それよりもっと困惑するのは、硬貨の取り扱いができないことだ。セブン銀行やイオン銀行などをはじめとするコンビニ系ATMで入出金するしかないネット銀行の場合は、以前からそれが問題だった。いや、自前のATMであるセブン銀行の口座所有者であっても、1000円未満の硬貨をATMで下ろすことはできない。そもそも、そういう構造になってはいないのだ。
もし、セブン銀行の預金を1円単位で下ろしたいとすると、硬貨が扱える大手銀行や地銀にある自分の口座へ振り込むほかない。1000円単位で下ろせるように計算して差額を入金するという方法も考えたが、ダメだ。入金も1000円単位となっており、硬貨が機械に入らないからだ。
「千円札で入金しているなら端数など出ないじゃないか」と思うかもしれない。しかし、残念なことにゼロ金利とはいえ普通預金には若干の利息がつく。また、デビットカードで決済していると1000円未満の端数が発生する。さすがに買い物まできっちり1000円単位で……とはいかない。
今でこそ、大手銀行の自行ATMでは1円単位の入出金ができる(出張所などではできないものもある)。しかし、あおぞら銀行や新生銀行の顧客は、それがもうできなくなった。筆者は新生銀行の口座があり、提携しているゆうちょ銀行ATMではもしや硬貨が扱えるのではと期待して下ろしに行ってみたが、やはりダメだった。
先に述べた三菱UFJ銀行と三井住友銀行の相互ATMも同じだ。お互いのATMでは相手方の通帳・硬貨は「ご利用いただけません」と、ホームページにはっきり書いてある。
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