ブロンコビリーの業績が悪化しだしたのは、こうした「いきなり!ステーキ」の郊外ロードサイドでの伸長が大きい。だが、その「いきなり!ステーキ」も勢いが衰え、既存店売上高は大幅なマイナスが続くようになった。それに伴い、ブロンコビリーの既存店売上高が回復するようになった面がありそうだ。

 もちろん、「いきなり!ステーキ」との競争以外の要素も大きく影響している。たとえば、5月下旬に販売を始めたウルグアイ産牛肉を使ったメニューが集客に寄与したと考えられる。ウルグアイ産は、口蹄疫発生を受け2000年から輸入が停止されていたが、今年2月に再開された。ウルグアイ産は放牧で肥育するのが主流で、赤身が多いのが特徴だ。ブロンコビリーはウルグアイ産 「炭焼き超厚切り熟成サーロインステーキ」を150グラムで税抜き1480円で販売。「炭焼き極選 リブロースステーキ」(同1980円)より500円安い。

 ブロンコビリーのウルグアイ産ステーキは、赤身肉ブームや物珍しさも手伝って、当初計画を大きく上回る売れ行きで、販売を一時休止しなければならなかったほどだ。これが集客に寄与し、既存店売上高の向上に貢献した。内部要因はこういった集客策が功を奏したことがある。

 一方、外部要因は「いきなり!ステーキ」の失速が大きい。このことにブロンコビリーはほっとしているのではないか。もっとも、「いきなり!ステーキ」の凋落を喜んでいるのはブロンコビリーだけではないだろう。

あさくまも攻勢を仕掛ける

「いきなり!ステーキ」に脅かされているステーキチェーンは多く、凋落を機に勢力拡大をもくろんでいるところは少なくない。愛知県の郊外ロードサイドを中心に店舗展開している「ステーキのあさくま」を運営するあさくまは、18年1月に新業態の都市型ステーキ店「やっぱりあさくま」を東京・九段下に出店し、都市部で「いきなり!ステーキ」に殴り込みをかけた。「やっぱりあさくま」から徒歩15分のところには「いきなり!ステーキ」の神保町店(東京都千代田区)や市ヶ谷店(同)がある。

「やっぱりあさくま」は都市型店ということもあり、1人客や女性客が食べやすい雰囲気の店舗となっている。「リブロースステーキ」は、基本となる量に50グラム刻みで増量してカットしてもらえる量り売りで、1グラム当たりの価格は現在6.8円となっている。なお、「いきなり!ステーキ」の「リブロースステーキ」も量り売りで、1グラム当たりの価格は現在6.9円だ。あさくまが「いきなり!ステーキ」を意識していることがうかがえる。

 あさくまは今年6月にジャスダック市場に式を上場した。6月末時点で「ステーキのあさくま」と「やっぱりあさくま」を計67店(フランチャイズ含む)展開するが、上場して得た資金をもとに店舗網を拡大したい考えだ。

 牛丼チェーン「松屋」を展開する松屋フーズホールディングスも、3月に「ステーキ屋松」を東京都武蔵野市に出店し、「いきなり!ステーキ」に挑んでいる。同店はJR三鷹駅の近くにあるが、隣駅のJR吉祥寺駅近くには「いきなり!ステーキ」吉祥寺店(東京都武蔵野市)がある。

「ステーキ屋松」の看板商品は「松ステーキ」だ。200グラムのステーキとサラダバー・スープバーがセットになり、価格は税込み1000円と手ごろだ。ステーキは米国産牛の肩甲骨付近の部位「ミスジ」を使用している。脂身が少ないのが特徴だ。10月1日には小田急線下北沢駅の近くに2号店となる下北沢店(東京都世田谷区)をオープン。11月6日にはJR吉祥寺駅近くに3号店となる吉祥寺店(東京都武蔵野市)を開く。同店が開業する場所から徒歩5分のところには、前述した「いきなり!ステーキ」の吉祥寺店が ある。ガチンコ勝負が繰り広げられそうで、どちらが勝者になるのかに関心が集まる。

 このように、「いきなり!ステーキ」の弱体化を機に、外食各社はステーキ店の出店攻勢をかけ、市場を開拓しようとしている。“ステーキ戦争”から目が離せない。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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