自治体に徴収された住民税の金額が間違っている!多く払った税金を取り戻す方法
今回は前回に引き続き、ふるさと納税分が住民税から控除されていなかった場合の対処法について、女性公認会計士コンビ、先輩の亮子と税務に強い後輩の啓子が解説していきます。
亮子「正直に言うと、住民税の額をきちんと確かめたこと、今までなかったな」
啓子「会社員だと、一般的には給与から住民税が自動で徴収されることが多いでしょうし、そうでない場合には納付書の通りに納付するだけかもしれませんね」
亮子「金額などに何か疑問がある場合には問い合わせをして、ということが住民税の納付書に書いてあったような気もするけれど、問い合わせたことないな」
啓子「今回は、税金に間違いがあったときの対応について、説明しますね」
ふるさと納税分の住民税が控除されていないときは
ふるさと納税をしたのに住民税が控除されていないとき、思っていた控除額と異なるときには、住民税の計算が間違っているのかもしれません。住民税の間違いには、いくつか理由が考えられます。住民税は年末調整や確定申告をしている場合、年末調整や確定申告に記載されている情報が地方自治体に伝えられて、各地方自治体が住民税の計算を行います。誤りの原因としては、確定申告書の記載が漏れていたり、記載が誤っていたり、自治体の入力処理ミスなどが考えられます。
「住民税が間違っているかな?」と思ったら、まずは、確定申告やワンストップ特例制度の手続きに誤りがないか確認してみましょう。
<確定申告をした場合>
確定申告をした場合には、まずは確定申告書の控えを確認してみてください。確定申告書の第一表「寄附金控除」欄が「寄附金-2000円」の金額となっているか確認しましょう。この金額になっていない場合は、確定申告が誤っていたために、住民税の計算も連動して誤っている状況です。この場合は、「更正の請求」という手続きで税金を修正します。手続きの詳細はのちほど説明します。
<ワンストップ特例制度を利用して、確定申告をしていない場合>
ワンストップ特例制度を利用している場合、寄附先にそれぞれ申請書を提出しますが、その提出に漏れがないか確認してみてください。ご自宅に申請書が残っていたなど、申請漏れはないでしょうか。あるいは、寄附先への申請書提出は、1月10日着までとなっています。申請書提出期限内に手続きできていたでしょうか。もしも期限に間に合っていないと、間に合わなかった寄附先への寄附分が、住民税の計算から漏れている可能性があります。
また、ワンストップ特例制度を利用する条件として、寄附先は5カ所以内という条件があります。6カ所以上に寄附をしたのにワンストップ特例制度を利用していないか、確認してみてください。ワンストップ特例制度を利用した場合に税金に誤りがあったら、「還付申告」という手続きで税金を修正します。手続の詳細はのちほど説明します。
<ふるさと納税の限度額の見込みが違っていた>
ふるさと納税の限度額試算が見込み違いだったということはないでしょうか。念のため、源泉徴収票や確定申告書をもとに、ふるさと納税の上限額を計算してみましょう。もしも、ふるさと納税の寄附額が上限額を超えていたら、自己負担が2000円とならず、2000円超の自己負担となります。この場合は、寄附金取り消しなどの修正はできませんので、次回ふるさと納税をする際に注意するようにしましょう。
<その他>
ワンストップ特例制度を利用して年末調整で済まそうと思っていたけれど、最終的に医療費控除や住宅ローン控除の適用をするために確定申告をしたという方もいるのではないでしょうか。ワンストップ特例制度は、あくまでも年末調整のみの方に限定されます。確定申告をした場合には、ワンストップ特例制度は無効となってしまいますので、確定申告時にふるさと納税の申告も必要となります。もしも、確定申告時にふるさと納税の記入が漏れていたら、その分税金計算が誤っているので修正が必要です。確定申告書を修正する場合には、「更正の請求」が必要となります。
住民税の修正は、住民税の納付方法が普通徴収であっても特別徴収であっても、確定申告をしていたら「更生の請求」、年末調整のみで済んでいたら「還付申告」が必要となります。これらの修正手続きをすることで自動的に住民税の修正がされる仕組みになっています。
以上の確認をしてみて、ミスなく手続きができている場合には、直接地方自治体に確認することをおススメします。住民税の計算に誤りがないか問い合わせをしてみましょう。住民税の通知書に問い合わせ先が記載されているはずです。
過去の確定申告に間違いがあったら
過去の確定申告に間違いがあったら、修正することが可能です。修正することで税金が減る場合には「更生の請求」という手続きをします。「更正の請求書」という用紙に必要事項の記載、必要書類の添付をして税務署に提出します。更正の請求は、申告期限から5年間可能となっています。そのため、仮に2018年分を修正する場合には、24年3月15日まで修正することが可能です。
一方、修正することで税金が増える場合には「修正申告」が必要となります。修正をする場合には、修正申告書(申告書B第一表・第五表)を作成して修正します。
また、確定申告をしておらず年末調整のみの方で、ふるさと納税がうまく適用できておらず税金を払い過ぎの場合には、「還付申告」で税金の還付を受けることが可能です。還付申告は申告をする年分の翌年1月1日から5年間行うことができます。たとえば、18年分について確定申告していない場合、23年12月31日まで申告することができるということです。還付申告は、確定申告書に必要事項を記載し、源泉徴収票、寄附先の自治体が発行した寄附金受領証明書、マイナンバーのわかる資料などを添付して手続きします。この寄附金受領証明書は年末調整のみ(ワンストップ特例制度利用)の方は手もとに保管していないかもしれないので、必要な場合には寄附先の地方自治体に再発行をお願いしてみてください。
源泉徴収票は再発行できるの?
還付申告をする際に、源泉徴収票が必要な場面があります。そんなとき、紛失などしてしまって手もとに源泉徴収票がない場合もありますよね。基本的によっぽどの理由がない限り、再発行ができます。源泉徴収票を会社に依頼をして再発行することになります。源泉徴収票の再発行について期限は決まっていませんが、会社は源泉徴収票の情報が記載されている源泉徴収簿という書類を7年保管する義務があります。そのため、過去7年間分については源泉徴収票の発行が可能なはずです。また、会社によってはそれ以前の情報が残っている可能性もありますので、源泉徴収票の発行が必要な場合には会社にお願いしてみましょう。
亮子「せっかく節税をしたなら、きちんと確かめたいですね」
啓子「はい。もちろん、それぞれの手続きをすれば節税になるはずなのですが、間違いが起きないとも限りません」
亮子「自分のお金には、納税まで責任を持つことが大事!」
啓子「税金となると、なんとなく敬遠したくなる気持ちもわかりますが、家計の管理の一部として接してみるといいと思います!」
(文=平林亮子/公認会計士、アールパートナーズ代表、徳光啓子/公認会計士)