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田代まさしの“兄貴”クールス・佐藤秀光インタビュー【後編】

田代まさしの“兄貴”が感じていた危うさと、「それでもあいつを信じてる」という信念

取材・構成=編集部
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2人の音楽ユニット「HEY BROTHER」としてのパフォーマンス(写真:CHOPPER F-Pro Hagi)

【前編】はこちら

 田代まさし(63)は、11月6日に覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで逮捕される直前まで、YouTubeチャンネル『田代まさし ブラックマーシー半生と反省を語る』に出演していた。この番組で田代と共に雑談を繰り広げていたのが、ロックンロールバンド「COOLS」(クールス)のリーダー・佐藤秀光(68)である。

 岩城滉一や舘ひろしらと結成したモーターサイクルチームから派生した同バンドを45年近く引っ張ってきた佐藤は近年、田代から「兄貴」と慕われていた。

 番組では古くからの付き合いがあるようにも見える2人だが、親しくなったのはわずか1年半前のこと。ハーレー&トライク(三輪バイク)カスタムショップ「CHOPPER」を経営する佐藤が、イベントでたまたま顔を合わせた田代を、自らが主催するツーリングイベントに誘ったのがきっかけだという。

「あいつとはウマがあった」と語る佐藤は以後、自らが手がけるイベントに田代を出演させたり、2人の音楽ユニット「HEY BROTHER」を結成したりしていく。また、苦しい生活を送る田代の新たな収入源として、YouTubeチャンネル『田代まさし ブラックマーシー半生と反省を語る』を仕掛けた。このチャンネルは多くのアクセス数を稼ぎ、田代は一定の収入源を確保することになる。

「俺は、田代は薬物をやっていないって信じてる。俺も長年生きてきて酸いも甘いも経験してるけど、田代ほど不憫に思ったヤツはいないよ」

 本サイトが佐藤に話を聞いたのは11月中旬。その後田代は、11月27日に覚せい剤取締法違反(使用)の疑いで再逮捕されている。しかし少なくとも佐藤は取材時点において、「田代を信じてる」ときっぱりと言い切っていた。

「どこに行っても犯罪者だって後ろ指を指され、白い目で見られるんだよな」

 それは、法を犯した著名人の宿命ではある。ましてや、逮捕されたのが一度や二度ではない田代ならばなおさらだろう。【前編】で述べた通り、そんな田代に佐藤は、彼なりのやり方で手を差し伸べた。

「『ついてこい』って、俺がやっていることに参加させることにしたんだ」

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佐藤秀光(さとう・ひでみつ)
1951年、東京都生まれ。1974年、大学の同級生であった岩城滉一や舘ひろしらと共にモーターサイクルチーム「COOLS」を結成。同チームが発展した同名のロックンロールバンドのリーダー、ドラムスを長年にわたって務め、東京都江東区のバイクショップ「CHOPPER」のオーナーも務める。日本最大規模のハーレー&ツーリングイベント「WANTED BIKER TOURING」の主催者としても知られる。(写真:CHOPPER F-Pro Hagi)

薬物にはそれ以上の“力”がある

 佐藤はプロデューサーとしてミュージシャンとして、バイク・トライクのプロフェッショナルとして、全国でさまざまなイベントを手掛けている。そんなイベントのいくつかに誘われた田代は、そこで生き生きと仕事をするようになっていく。好きなこと、得意なことを仕事にしてきた佐藤は、再び田代にも、音楽や笑いで生活できるような手段を提供したかったのだろう。また、前向きに生きていけるよう叱咤激励さえした。

「田代と一緒に動いてる仕事はみんなチャリティだったのよ。『自分がやっていることが人の役にも立ってるんだよ』って、あいつに言い聞かせていた」

 ミュージシャン、コメディアンとして売れっ子だった時代にかかわっていた多くの人たちが、多数の逮捕歴のある田代と関係を絶ったが、佐藤は田代と付き合うことに抵抗はなかったという。

「俺のつくった歌のなかに、『過去は蹴飛ばせ』『大事なのは未来だ』って内容の歌詞があるんだけど、そうなんだよ、やっちまったことはもう仕方ない。過去の過ちを教訓にして、未来を生きていけばいいんだ。そうじゃなきゃバカだよ。でも田代は、『バカだと思う前に、それ以上に薬物には“力”がある』って言うんだよなあ。相手が悪いと。俺は経験がないからわからないけどね」

 そんな田代が、薬物に依存せず社会で堂々と暮らしていけるよう、仕事面以外でも積極的にサポートしていたという。

「内田裕也さんの葬儀や安岡力也さんの息子さんの結婚式とか、いろいろなところに田代を連れ回したんだ。だけどあいつは、葬式に着ていくような服さえ持ってないって言うんだよ。それはまずいってことで、スーツを揃えさせたりね。日本ダルク(田代が働いていた民間の薬物依存リハビリ施設)で働くのはいいことだけど、そこでもらっている額では、とても食べていけないってことでさ」

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COOLSのライブにゲスト出演して歌う田代まさし氏。奥でドラムを叩いているのが佐藤秀光氏。(写真:CHOPPER F-Pro Hagi)

“ここだけの話”への躊躇

 佐藤の仕事にかかわるようになりYouTubeチャンネルも開始することで、収入面で以前よりも安定した田代には、徐々に笑顔が増えていったという。ただし佐藤は、アクセス数面では好調だった『田代まさし ブラックマーシー半生と反省を語る』におけるトークについては、疑問に思うこともあったそうだ。田代は、下ネタや薬物ネタをボーダーラインギリギリのレベルで話すことがたびたびあったからだ。

「不謹慎だって批判されてもしょうがないような言葉もあった。雑談してストレスを発散してもらい、それが多少の収入にもつながればって目的はあったけど、『品をよくすることは大事だよ』『変態的な考えをネタにしたトークは控えなきゃいけない』って思うことはいっぱいあった」

 見た目は不良オヤジだが、佐藤はいたって常識人なのである。

「本当は何パーセントか、『この番組、辞めたいな』っていう思いもあったんだよね。人の名前を出すじゃない? そうすると、何かと揉めますよ。だから、田代の様子も見ながら、徐々に徐々に変えていきたいっては考えていた」

 鈴木雅之、桑野信義、志村けん、矢沢永吉、岩城滉一、舘ひろし。『田代まさし ブラックマーシー半生と反省を語る』は、佐藤、田代それぞれにゆかりのある人物ついて言及し、“ここだけの話”をすることも多かった。そうした要素が受けたのだろう、結果的にアクセス数を稼ぐことはできたが、佐藤としてはそんな状況に、漠然とした不安もあったのだろう。

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2019年11月5日に配信された「ブラック ・マーシー 刑務所はつらいョ よそ見編」より。この翌日に田代まさし氏逮捕の第一報が流れたことにより、事実上、『田代まさし ブラック マーシー半生と反省を語る』最後の配信となってしまった。
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