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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

スノボ國母、営利目的の大麻密輸は田代まさしより悪質…日本人が勘違いする海外大麻合法化

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
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バンクーバー五輪時の謝罪会見での國母和宏/「反省してまーす」の発言が物議を醸した(写真:アフロスポーツ)

 プロスノーボーダー・國母和宏容疑者が、去年12月にアメリカから大麻製品およそ57グラムを国際郵便で密輸したとして11月6日、麻薬取締法違反の疑いで厚生労働省麻薬取締部に逮捕された。夢を与えるべきアスリートにあるまじき行為だ。

 芸能人やスポーツ選手など著名人が逮捕されたというニュースがたびたび報じられるので、大麻を所持することが犯罪であることは広く知られているだろう。

 大麻取締法第3条第1項には、「大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない」との規定がある。國母容疑者の場合、大量に所持するなど販売目的だったとみられており、その罪は単純に所持しているケースより重い。奇しくも同日、元タレントの田代まさしが覚せい剤を所持していたとして逮捕されたが、田代は自身の快楽を求めたものであり、販売の意図はみられない。

 大麻取締法による規定は、以下の通りだ。

・単純所持…5年以下の懲役(同法第24条の2第1項)

・営利目的所持…7年以下の懲役及び200万円以下の罰金(同法第24条の2第2項)

 しかし、現在10社以上のスポンサー契約もある國母容疑者が、営利目的で大麻を所持していたとの報道に、驚きとショックを受けたファンも多いことだろう。ファンや日本アスリート界にとっては、軽い気持ちではすまされない裏切り行為である。

海外と日本の大麻文化

 現在、大麻が合法とされている国は、オランダ、スペイン、チェコ、ウルグアイ、チリ、コロンビア、さらに昨年、カナダでも合法化された。また、アメリカはコロラド州、カリフォルニア州で合法となっている。しかしながら、そういった国や地域では各々のルールがあり、それに従った使用が認められている。だが、薬物としての大麻は日本では一律に違法であり、使用に際してのガイドラインはない。当然、大麻に関する知識も深くならない。カナダでは合法化にあたって、大麻販売にライセンスを設けた。カナダ大使館に取材をしたところ、次のような回答があった。

「医療用大麻の取り扱い・販売にはライセンスが必要であり、医療用大麻も国の承認を受け、一定の規定を満たしたものです。また、医療用大麻は、患者が医師の処方箋を薬局に持っていって購入します。

 大麻の合法化の目的のひとつは、嗜好品とはいえ健康被害が出ないように、基準を設けることです。そのため、体に有害な不純物などが含まれないように、製造や取り扱いにもライセンスが必要となります」(カナダ大使館広報担当官)

 カナダのように、大麻を合法化するには監視を強化する必要がある。國母容疑者は、海外滞在が長く、大麻に容易に触れることができたと考えられ、それが大麻に対するハードルを低くしてしまったのかもしれない。

 仮に、國母容疑者が海外で大麻に触れ、日本でも合法化されることを望むのだとするなら、するべきことは大麻密輸ではないはずだ。政府や有識者とディスカッションの場を設けるなど、日本を代表するアスリートだからこそできることがあったのではないか。國母容疑者の行動は擁護できるものではないが、大麻に関する芸能人・著名人の逮捕報道を聞くたびに、取り締まりを強化する一方で、医療使用の可能性などについて行政機関や有識者を交えた話し合いが必要ではないかと考えさせられる。

(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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