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ツルハとウエルシア、経営統合の可能性も…マツキヨ首位奪還で、イオンが“強権”発動か

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
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マツモトキヨシの店舗(撮影=編集部)

 ドラッグストア大手のマツモトキヨシホールディングス(HD)とココカラファインが、2021年10 月に経営統合することが決まった。両社合算の売上高は約1兆円で、業界首位に立つ。業界ではM&A(合併・買収)が盛んに行われ、再編が加速している。両社の経営統合でそのうねりは一段と大きくなる。

 両社は共同で持ち株会社を新たに設立し、株式移転により両社がぶら下がるかたちで統合する。新会社名や経営体制は、今後詰める。統合に先立ち今年4月までに、マツキヨHDはココカラの第三者割当増資を引き受けてココカラ株を約383億円で取得し、すでに保有する株式と合わせて出資比率を20.04%(議決権ベース)に高め、ココカラを持ち分法適用会社にする。

 マツキヨHDの18年度の売上高は、5759億円で業界5位だ。かつては長らく首位に座り続けていたが、近年、ウエルシアHDやツルハHDなどに抜かれ、順位を落とし続けている。そうしたなか、4005億円で7位のココカラと経営統合する。19年度計画で見ると両社合算の売上高は1兆90億円となり、18年度における首位のツルハHDなどを超えてトップに躍り出る。

 ドラッグストア業界ではM&Aが活発だ。ツルハHDとウエルシアHDがマツキヨHDを売上高で抜き去ったのも、M&Aが大きな要因となっている。ウエルシアHDが16年度の売上高で、それまで首位だったマツキヨHDを抜き去ったのは、15年9月に完全子会社にした同業のCFSコーポレーションの業績が大きく寄与した。さらに、ツルハHDが18年度の売上高でウエルシア HDを抜き去ったのも、同業のビー・アンド・ディーHDを傘下に収めたことが大きく寄与した。

 ココカラも、今後はM&Aを強めていく。マツキヨHDに対する第三者割当増資で381億円を調達するが、そのうち223億円を22年3月までの2年間でM&Aなど成長投資に割り当てるという。これを含めて467億円を投資し、大型案件を含めたM&Aを進める考えだ。

ドラッグストア業界、M&Aが加速の可能性

 ドラッグストア大手各社がM&Aを積極的に行って規模を急拡大させている背景には、スケールメリットによるコスト低減効果が大きいことがある。 そのひとつが商品の共同調達によるコスト削減だ。商品の仕入れを一本化することで、仕入れ原価の低減とリベートの増加が期待できる。マツキヨHDとココカラが経営統合するのも、これが大きな理由となっている。ウエルシアHDがCFSコーポレーションを完全子会社にしたのも同様の理由だ。

 マツキヨHDとココカラの統合では、プライベートブランド(PB)商品の相互供給や新規のPB商品の開発で大きな相乗効果も期待できる。マツキヨHDのPBは評価が高い。品質にこだわった幅広い品ぞろえのPB「matsukiyo」のほか、 オーガニック化粧品PB「アルジェラン」、衣料ケア用品PB「レプリカノーツ」など複数のPBを持つが、どれもオリジナリティがあり、高い競争力を持っている。アルジェランは累計1000万個以上を販売するヒット商品だ。こうしたPBが育っているため、マツキヨHDのPB商品の売り上げに占める割合は11%と高い。

 マツキヨHDの売上高営業利益率が大手の中で群を抜いて高いのは、PB商品が充実していることが大きい。18年度の同社の営業利益率は6.3%にもなる。ココカラ(3.2%)やツルハHD(5.4%)、ウエルシアHD(3.7%)よりも高い。PB商品は一般的に利益率が高く、全体の利益率向上に貢献する。

 そうしたなか、マツキヨHDは利益率が高いとされる化粧品のPBを充実させている。18年度のPB商品売上高に占める化粧品PBの割合は21%で、2年前(17%)から大きく増えた。同社では化粧品が重要な商品となっていて、売上高に占める割合は高い。18年度は40%となっており、医薬品(31%)や雑貨(17%)、食品(9%)よりも高く、商品別では最大となっている。化粧品は売上総利益率が高く、18年度は化粧品が32%で、医薬品(41%)には及ばないものの、雑貨(25%)や食品(14%)よりも高い。こうしたなか、化粧品PBを充実させることで、さらなる利益率向上を実現する狙いがありそうだ。

 ココカラはマツキヨHDと統合することで同社からPBの供給を受けたり、同社のPBのノウハウを自社のPB商品開発に生かせるメリットがある。もちろんマツキヨHDとしても同様だ。

 両社は展開エリアを相互に補完できる関係にあることも大きい。マツキヨHDは全国に1681店(19年9月末時点)、ココカラは1333店(同)を展開する。マツキヨHDは関東に店舗が集中している一方でココカラは関西にも店舗を多く展開しており、それぞれ展開エリアを補完できる。また、店舗数が増えることで物流効率が高まり、コスト削減も期待できる。さらに、両社は都市型の店舗が多いという点で共通しているが、商圏が重複して競合関係にある店舗の統廃合を進めることで採算性を高められる。

 規模拡大による知名度向上で、薬剤師や医薬品の登録販売者の確保も容易になる。薬剤師や登録販売者を十分に確保できるようになれば、処方箋の受付枚数の上積みや処方箋なしで買える一般用医薬品(大衆薬)の販売増、対面での健康・医療サービスの充実化によるリピーター客の囲い込みなどが期待できる。薬剤師不足が深刻化するなか、このメリットは小さくない。

 このように多くのメリットが得られるため、両社は経営統合に踏み切った。統合効果を最大限に発揮し、競走を制したい考えだ。ただ、マツキヨHDとココカラの経営統合を見て、競合も黙ってはいないだろう。対抗するかたちでM&Aを仕掛けて規模拡大を狙うところがあっても不思議はない。

 たとえば、ツルハHDとウエルシアHDが統合することも十分考えられる。両社とも大株主が流通最大手のイオンで共通している。そのイオンが主導するかたちでM&Aが起きる可能性は捨てきれない。もし両社が統合すれば、19年度計画の合算売上高は1兆6700億円にもなり、マツキヨHDとココカラの合算売上高(1兆90億円)を大きく上回る。

 こうした大規模M&Aが起こり得るため、マツキヨHDとココカラは統合して業界首位に立つとはいえ、安穏とはしていられない。ドラッグストア業界では、規模拡大を目指した動きが活発化することも十分あり得る。いずれにせよ今後の動向を注視していきたい。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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