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ファミマ、なぜ好調なのに1千人超のリストラ?直面する経営リスク、無断発注問題も火種燻る

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
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ファミリーマートの店舗(「Getty Images」より)

 ファミリーマートは2月19日、1025人が希望退職すると発表した。約800人としていた募集人数を大きく上回った。応募者数は1111人にも上ったという。インターネット上では「仕事をしていても窮屈なことがあるのかな?」「泥船と心中はゴメンてことね」といったコメントが見られ、ファミマの仕事や経営を危険視した社員が希望退職の募集に殺到したと推測するコメントが目立った。

 とはいえ、ファミマの業績は悪くはない。1月10日発表の2019年3~11月期連結決算(国際会計基準)の事業利益は、前年同期比32.2%増の637億円と大きく増えた。国際会計基準の事業利益は日本基準の営業利益に相当し、本業のもうけを示すが、前期に不採算店を閉鎖した効果が出たほか、宣伝販促費の効果的な運用が採算改善につながった。

 売上高にあたる営業収益は17.1%減の3902億円と大幅減収だった。これは総菜を手がけるカネ美食品が連結対象から外れたほか、ファミマの直営店が減少した影響が出たためだ。ただ、事業利益が向上したので、こうした理由による営業収益の減少は問題ではない。

 このように、ファミマの業績は悪くはないので、希望退職による人員削減を行う必要はないようにも思える。だが、人員数が適正でないほか、今後の経営環境が厳しさを増すと予想されているため、人員の削減を行うことは合理的といえる。

 ファミマは店舗数に合わせて人員数の適正化を図る必要があった。店舗数が減ったにもかかわらず、従業員数は減っていなかったためだ。

 16年9月にファミマとユニーグループ・ホールディングス(HD)が経営統合したが、ファミマは統合後にユニーグループHD傘下のコンビニ「サークルKサンクス」をファミマにブランド転換していった一方で、不採算店の閉鎖を進めた。16年9月末に約1万8000店だった国内の店舗数は、19年10月末で約1万6500店まで減った。

 一方でファミマ単体の従業員数(臨時雇用者数を除く)は、ほとんど減っていない。17年2月末時点で6199人、19年8月末時点で6175人と、概ね横ばいで推移してきた。統合後にも希望退職の募集は行われていなかったといい、店舗数の減少に見合った人員削減を行っていなかったのだ。このミスマッチを解消するため、希望退職の募集が行われることとなった。

今後の成長に不透明感が漂う

 高い収益性を確保することも大きな理由だ。もっとも、前述した通りファミマの事業利益は増えており、十分な額を叩き出せている。20年2月期はブランド転換にかかる費用がなくなり、事業利益は前期比26.1%増の650億円となる見込みだ。だが、今後も十分な利益を確保できるかは予断を許さない。

 コンビニは国内では飽和に近づいているとの見方があり、今後は大きな成長が見込みにくい。また、最近は24時間営業の是非をめぐる議論が広がり、それに伴い、フランチャイズチェーン(FC)加盟店への支援が求められ、その費用がかさむことが見込まれている。

 ファミマは約800人の希望退職を募集すると同時に、加盟店への支援策を打ち出した。24時間営業をする場合の支援金を増額するほか、経営する店舗を増やした場合の奨励金を増額する。ほかも含めて支援策に年間約100億円を充てる考えだ。こうした費用は今後さらに膨らむことも十分、考えられる。

 そうしたなか、1025人が希望退職する。うち924人が正社員で、101人は非正規社員だ。日常のオペレーションの継続に重大な影響を及ぼす可能性のある一部社員は適用外とした。割増退職金の総額は約150億円で、20年2月期の連結決算で費用計上する。一方で21年2月期以降に年約80億円の経費減につながるとしている。こうした希望退職で人員数の適正化を図るとともに、収益性を維持・向上させたい狙いがある。

 希望退職による人員削減が決まったので、ファミマのリストラはこれで一区切りついたといえる。今後は成長戦略に焦点が移る。最近は24時間営業問題で隠れがちだが、商品力を高めて日販(1店舗の1日当たり売上高)を向上させることが求められている。ファミマは澤田貴司社長がインタビューでコンビニ飽和論を唱えるなど、出店による成長に否定的なため、競合のセブン-イレブン・ジャパンやローソン以上に日販の向上が重要といえる。

 だが、ファミマの日販はセブンとローソンに水をあけられている。ファミマの19年3~11月期の日販は53.4万円だった。セブン(同66.0万円)とは12万円以上の差があり、その背中は依然として遠い。ローソン(同54.0万円)との差も広がっている。

 もちろん、対策は講じてきている。19年3~11月期は中食の商品力強化を図ったこともあり、おにぎりや総菜・冷凍食品ブランド「お母さん食堂」が好調だったという。お母さん食堂では、昨年9月に発売した「麻婆豆腐丼」などワンプレート型の冷凍食品が好調だった。また、総額200億円を投じ、店舗でいれるコーヒーの新型機を全店に導入したので、特に「カフェラテ」の販売が好調に推移し、売り上げをけん引した。

 こうした施策でファミマの日販は上昇傾向にある。ただ、セブンとローソンに水をあけられている状況から、大きな成果を上げたとは言い難い。

 無断発注問題も尾を引いている。昨秋にセブンの本部社員がFC加盟店におでんを無断で発注する問題が起きたが、今年に入ってファミマでも本部社員によるFC加盟店での商品の無断発注が発覚した。セブンは無断発注の事実を認め、社員2人を懲戒処分にするなどして鎮静化を図った。一方、ファミマは対応を検討しているが、今のところ結論は出ていない。火種がくすぶったままの状態で、対応によっては大きな批判を招きかねない。

 24時間営業問題では、ファミマは加盟店に寄り添う姿勢を見せ評判を上げた感があるが、今後の舵取り次第では風向きが変わりかねない。リストラで体制固めに一区切りがついたこともあり、今後は風向きが変わらないよう注意しつつ、着実に成長を果たしていくことが求められている。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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