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片田珠美「精神科女医のたわごと」

立川志らくの不倫妻を苛む“志らくへの欲求不満”…今後も不倫をやめられないと考えられる理由

文=片田珠美/精神科医
立川志らくの不倫妻を苛む志らくへの欲求不満…今後も不倫をやめられないと考えられる理由の画像1
「gettyimages」より

 落語家の立川志らく師匠の妻である酒井莉加さんが、弟子と不倫関係に陥っていると「週刊文春」(3月12日号/文藝春秋)で報じられた。事実とすれば、志らく師匠は「妻を寝取られた男」である。こういう男をフランス語では「コキュ ( cocu )」と呼ぶ。

 同じようにコキュの悲哀を味わったのが、19世紀末から20世紀初頭にかけてプラハやウイーンなどで活躍したユダヤ人の作曲家、グスタフ・マーラーである。マーラーの「交響曲第5番」は、ルキノ・ヴィスコンティ監督の映画『ベニスに死す』(1971年)で用いられて、当時レコードがベストセラーになった。また、1980年代には、「大地の歌」がサントリーのCMで使われて、爆発的なマーラー・ブームを巻き起こした。

志らく師匠とマーラーの共通点

 志らく師匠とマーラーの家庭環境は似ている、というかそっくりに見える。まず、2人とも、18歳も年下で美しい妻を持つ。志らく師匠の妻はアイドルグループで活動していたほどの美貌の持ち主だし、マーラーの妻、アルマも社交界の花形だった。また、2人の娘を溺愛という共通点もある。さらに、妻が不貞行為を繰り返すという点でも似ている。

「文春」によれば、志らく師匠の妻が夫の弟子を“愛人”にしたのは今回が初めてではない。4年前にも別の弟子と不倫関係に陥り、その弟子に、志らく師匠は破門を言い渡したという。マーラーの妻も、夫の無理解と性的な欲求不満のせいで好みの男性に会うと強烈に誘惑した(『大作曲家たちの履歴書(下)』以下、マーラーの夫婦関係については同書を参照)。

 妻の不倫を結局は許すところも、そっくりだ。志らく師匠は、3月5日、司会を務める朝の情報番組で「私は妻のことを信じております」と述べた。マーラーも、知らぬふりをしたり、ときには自らあいびきの便宜を図ったりした。

 世間体を考えて波風を立てたくないのか、溺愛する娘たちと離れたくないのか。それとも、虚勢なのか、若い妻への自責の念なのか。ちょっと理解に苦しむが、表面上は妻の不倫を許したからといって、夫が心穏やかでいられるわけではないだろう。

 マーラーは、妻の不倫に悩んで精神的危機に陥り、一度だけフロイトの診察を受けたことがある。そのとき、フロイトは「アルマはファザコンだから、マーラーの年齢には魅力を感じるはずだ」と言ったそうだが、この助言が志らく師匠にも有効かどうかは疑問である。

「2度あることは3度ある」反復強迫

 志らく師匠は、先述の情報番組で「このことで夫婦の絆が壊れることもございません。離婚することも1億%ございません」と断言した。だが、「2度あることは3度ある」という言葉通り、妻は不貞行為を繰り返すのではないかと危惧せずにはいられない。マーラーの妻もそうだったからである。

 マーラーの妻が不貞行為を繰り返したのは、作曲家の三枝成彰氏が指摘する「性生活の不一致」のせいかもしれない。アルマの自叙伝によれば、性的関係はたまにしかなく、しかも愛撫が下手だったという。おそらく、健全な性生活ができないマーラーに対して妻の欲求不満が募ったのだろう。

 志らく師匠の性生活について他人がうかがい知ることはできない。ただ、志らく師匠は売れっ子で忙しく、地方公演のために家を空けることも少なくないので、妻が構ってもらえないと感じ、欲求不満を募らせる可能性は十分考えられる。しかも、志らく師匠の妻は、19人の弟子を取り仕切る「おかみさん」の立場にあり、常に若い男性に囲まれている。

 こういう状況で「2度あることは3度ある」という言葉通りになっても、不思議ではない。このように同じことを同じパターンで繰り返す現象を精神分析では「反復強迫」と呼ぶ。この「反復強迫」は、無意識の満たされぬ欲望によって引き起こされる。志らく師匠の妻も、満たされぬ欲望を抱いているように見えるのは、私がフロイトの精神分析的思考に毒されているからだろうか。

コキュの悲哀を芸の肥やしに

 随分辛らつなことばかり申し上げてきたが、志らく師匠がコキュとして悲哀を味わったことは、落語家として大成するうえで大きな糧になると私は思う。志らく命名の由来は、フランスの大統領だったジャック・シラクだそうだが、フランスといえばコキュの本場であり、コキュ小説の系譜もある。たとえば、ノーベル賞作家のアンドレ・ジッドは、自分の妻が他の男と寝るのを見て興奮する性癖を持つカンダウレス王の物語を戯曲に仕立て上げており、オペラにもなっている(注)。

 間男は、落語の定番のネタだ。それだけ、江戸時代から間男に妻を寝取られたコキュが多かったわけで、コキュの悲哀を笑いに昇華させるところにこそ落語の醍醐味がある。志らく師匠がコキュとして味わった悲哀を芸の肥やしにして、間男の落語では右に出る者がいない名人になられることを切に願う。

(文=片田珠美/精神科医)

(注)自分の恋人や妻が他の男と寝るのを見て興奮する性癖を、カンダウレス王にちなんで「カンダウリズム」と呼ぶ。

【参考文献】

三枝成彰『大作曲家たちの履歴書(下)』 中公文庫 2009年

片田珠美/精神科医

片田珠美/精神科医

広島県生まれ。精神科医。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。パリ第8大学博士課程中退。京都大学非常勤講師(2003年度~2016年度)。精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析学的視点から分析。

Twitter:@tamamineko

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