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安倍政権、消費税「減税」論浮上…日銀、ETF含み損で巨額損失か、揺らぐ中央銀行の信頼

文=編集部
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黒田日銀総裁(写真:ロイター/アフロ)

 日本銀行株は3月11日、3.4%安の2万8000円。12日は2万5510円、13日2万5500円と連日、上場来安値を更新した。さすがに週明けの16日は2万8000円(2500円、9.8%高)と反発したが迫力に欠けた。

 株といっても、議決権のない出資証券。JASDAQで通常に売買されている。アベノミクス相場が始動した2012年11月から13年3月にかけて3倍高を演じるなど、金融政策を色濃く投影した値動きをみせるのが日銀株の特徴だ。売買単位は100口。1988年12月の最高値は75万5000円。13日の安値と比較すると30分の1となった。ここ10年来の高値は9万4000円(2013年3月19日)である。

 日銀の黒田東彦総裁は3月10日、日銀保有の株価指数連動型ETF(上場投資信託)の時価が簿価を下回る損益分岐点が、日経平均株価で1万9500円程度に相当することを明らかにした。黒田総裁によれば、「2019年9月末で分岐点は1万9000円程度だったが、その後のETFの買い入れで500円程度水準が上がった」。日銀は年6兆円のETFの購入枠を持ち、19年は約4兆4000億円の買い入れを行った。

 今月13日、一時、日経平均株価は1万7000円の大台を割り込み、1万6690円(1869円安)をつけ、株価は日銀に含み損が出る状況となった。日経平均株価が1万3000円台まで暴落すると日銀は債務超過に転落する、との試算もある。

 ETFの購入枠については「6兆円の枠にこだわらない」、つまりETFを買い増すとの見方が台頭、大手証券会社の直近のリポートは「日銀がETFの購入枠を年8兆~9兆円に拡大する可能性がある」としていた。9兆円だと19年の買い入れ実績の2倍に相当する。

 3月16日正午に前倒しして開かれた日銀金融政策決定会合では、金融市場の動揺を踏まえ、「必要な金融調整事項の検討を行う」と事前にアナウンスし、18、19日の予定を急遽、繰り上げた。蓋を開けてみたら、「ETFの買い入れ額を当面12兆円と倍増する」ことを決めた。

 これを受けて、日経平均株価の上げ幅は一時、300円を超えたが、「基本的な買い入れベースは従来通り6兆円」としたため、日銀の取り組み姿勢に対する失望感が広がった。大引けにかけて売りがかさみ、下げ幅は一時、516円に達した。3月16日の終値は429.01円安の1万7002.04円。

「日銀の金融政策決定会合に向けて投機筋の仕掛け的に売りが出る」(日銀ウォッチャー)

 こうした予言通りとなり、日経平均株価は13日の終値を400円以上、下回った。日銀の“株価対策”は完全に空振りに終わった。

日銀ETFの含み損は2.8兆円

 3月13日の日経平均株価は、終値でも前日比1128円安の1万7431円と暴落した。この結果、日銀が保有するETFの含み損は拡大した。JPモルガン証券の試算によると、13日の終値で含み損は約2兆8000億円まで膨らんだ。含み損は、わずか1日で約1兆5000億円増えた計算になる。

 3月13日時点で日銀は取得時の金額で29兆9400億円分のETFを保有している。19年9月末でETFの含み益が3兆9000億円あったが、株価暴落でマイナスに転じ、苦況に陥った。これまでに保有ETFから、株式の配当を原資にした分配金を1兆7000億円程度受け取っているが、今回、分配金を加えてもリターンがマイナスとなった。

 決算期日は3月末だ。保有するETFの含み損が解消されなければ、日銀は決算で含み額と同額の取引損失引当金を計上しなければならなくなる。損失の計上は、安倍政権の経済政策、アベノミクスの一環として日銀がETFの購入を拡大してから初めてとなる。マイナス金利の導入など異例の経済政策を打ち続ける日銀が巨額の損失を出せば、中央銀行としての信頼が揺らぎかねない。

GPIFの損失は20兆円超の可能性

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用している公的年金積立金にも、多額の含み損や評価損が発生している模様だ。「日経ヴェリタス」(日本経済新聞社/3月15日号)は次のように報じている。

<GPIFの19年12月末の運用資産は169兆9900億円だった。基本ポートフォリオ(国内債35%、国内株25%、外国債25%、外国株25%)通りに配分し、各資産のベンチマーク(株価指数や債券指数など)騰落率と同率の損失を出していたと仮定すると、3月13日現在の運用資産は148兆円程度まで目減りしたと試算できる。損失は内外の株式だけで約15兆円、さらに債券でも約5兆出た>

日銀、社債・CP購入拡大へ

 3月16日の緊急金融政策決定会合で日銀は、大企業が資金調達のために発行するコマーシャル・ペーパー(CP)や社債の購入を増やした。現在はそれぞれ2.2兆円と3.2兆円の残高を維持する目標を掲げているのを1兆円ずつ(合計2兆円)増やす。中小企業の資金繰りを支えるために、金融機関に原資をゼロ金利で貸し付ける制度を新設した。コロナウイルス禍で金融市場と株式市場の動揺が広がっているのを受けて、日銀は機動的に対応する、とした。

 米英など他の海外の中央銀行は相次いで大幅な利下げに踏み切ったが、現在、マイナス0.1%の政策金利の引き下げ(マイナス金利の深掘り)は見送られた。金融機関の経営をさらに圧迫する副作用の懸念が根強いためだ。

減税はあるのか

 自民党内からは「期限限定で消費税減税」案が出ている。内閣官房参与の浜田宏一・エール大名誉教授は3月15日付産経新聞で「2年程度、増税を撤回してもよい」との考えを示した。それでも、政府が消費税減税に踏み込む可能性は低い。

「期間限定で5%に引き下げたとしても元に戻すのが大変なうえに、周囲の懸念を押し切って昨年10月に消費増税を“政治決断”した安倍晋三首相の“責任論”に波及しかねない」(金融アナリスト)

 首相側近からも消費税減税は「慎重にすべきだ」との発言が出ている。小中高校一斉休校もそうだったが、準備、根回しなしで安倍首相が消費減税に言及したりすると、「レジはどうする。ポイント還元はどうなる」と街の商店の店頭で大混乱が起こりかねない。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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