
米国シンクタンクが公表した死亡人口予測
新型コロナウイルス・パンデミック(感染症の世界的大流行)に関する衝撃的な予測がある。米国屈指の政策シンクタンク「ブルッキングス研究所」(ワシントンDC)は3月2日、新型コロナウイルスの感染拡大が今後の世界経済に及ぼす影響を予測した報告書「COVID-19による世界的マクロ経済への影響~7つのシナリオ」(便宜上、タイトルは筆者仮訳)を公表した。
世界5大シンクタンクのひとつとして知られ、米国政府との距離も近い同研究所がまとめた43ページにわたるこの報告書のなかで、「人口への影響」に関する項目に添付された国・地域別の表には、信じ難い数字が並んでいる。下表は、そこに記された予測値一覧から、世界と日本における予測死亡人口を抜粋・並記したものだ。
一瞥しただけで背筋が凍るシロモノである。季節性インフルエンザの場合、間接的な死亡も合算した「超過死亡概念」に基づく世界の年間死亡者数は25万~50万人と推計されているが、これは桁が違うのだ。
同報告書でこの表とは別に目を引いたのが、後半に添付されている別表「各国死亡率」である。下表は、死者激増中のイタリアと日本における「致死率」予測データを並べたものだ。日本は、7つのシナリオにおける各々の死亡率が世界中で唯一、イタリアと同じ比率になっている(筆者注:「S」はシナリオ番号、「-」は未試算のため空欄)。
イタリアは3月2日に死者52人だった。現在の日本と近い死者数だ。果たして、日本は大丈夫か。言うまでもなく同報告は「予測」であり、誰もがそうならぬよう回避したいと願っている。早期に治療薬やワクチン薬が開発されれば、杞憂にすぎなかったと安心することもできる。
ただし、未解明の新型コロナウイルス・パンデミックに対する治療薬やワクチンは、開発後の治験に1年はかかることが見込まれている。短期間にすさまじい速度で感染が拡大し死者が急増する「傾斜角」をみれば、その時間はあまりにも長すぎる。
感染者数の激増で東京都も「感染爆発」に突入か
パンデミックの猛威は日を追うごとに勢いを増している。
本稿執筆中の3月30日17時現在、世界の感染者数は約72万3124人、死者数は約3万3986人。特に欧米では、信じられないような勢いで死者が急増中だ。イタリアは感染者9万7689人中の死者1万779人。米国が感染者14万2637人中で死者2485人。スペインも感染者8万110人中に死者6803人。
各国ともすさまじい死亡者数だ。治療薬もワクチンも未開発、病床数や人口呼吸器具、医療物資などはすでに限界目前。補充の見通しは立っておらず、遺体を収納する冷蔵庫の空きさえない。どの国も、今のままだと医療現場が確実に崩壊する。
感染者数・死者数の急増グラフが示す鋭い「傾斜角」と、予想される「医療崩壊」を併考すれば、冒頭に掲示したブルッキングス研究所の予測数値がにわかに現実味を帯びてくる。
一方、日本は30日現在の感染者数がクルーズ船を含めて2605人、死者数64人。一見して、数字の上での死者数には前述の欧米各国と大差があるが、現在の数字だけでは何も判断できない。