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緊張深まる日韓――「国境の島」対馬の経済を直撃(上)

対馬、韓国人観光客9割減で経済に大打撃…韓国資本のホテル、飲食店、免税店も壊滅状態

文=北沢 栄/ジャーナリスト
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 昨年7月を境に急激に冷え込んだ日韓関係が、「国境の島」対馬の経済を直撃している。一昨年は史上最高の41万人に上った韓国人観光客が、昨年7月以降は毎月、前年に比べ実に9割前後も激減しているためだ。今年2月からは新型コロナウイルスの影響も加わり、歯止めがかからない。いったい、どんな状況なのか――現地を訪れ、実情をルポする。

 対馬(長崎県)が日韓の仲を鏡のように映すことは、長い歴史が示す。その歴史は、対馬の地理的・地政学的条件に由来する。対馬北端に近い比田勝から韓国の釜山まで約50キロ、これに対し対馬南の最大の町、厳原(いづはら)から博多湾まで約100キロと、韓国より日本のほうが2倍も遠い。対馬の北端からは釜山の町が眺望でき、夜には光を放つ釜山の夜景が楽しめる。

 そもそも、「対馬」という少し奇妙な島の名は、日本から朝鮮半島へ渡る際に津(船の停泊地)となる島(津島)に由来するとも、朝鮮半島南部の古代小国家・馬韓と相対する島であることに由来するともいわれる。対馬の人口は3万379人(昨年12月現在)。前年比で577人減った。この人口わずか3万人の島に、一昨年は41万人あまりの韓国人観光客が訪れたのだ。それが今、幻のように消えてしまったのだから、島民への経済的打撃は底知れない。

「経済はどんどん上がってストンと落ちた。免税店の中には閉めたところもある。韓国資本で建設中だった近くのホテルは、完成したがオープンできずにいる」。厳原の住民が明かした。

対馬、韓国人観光客9割減で経済に大打撃…韓国資本のホテル、飲食店、免税店も壊滅状態の画像1
オープンできない韓国資本の新設ホテル

 とりわけ、韓国人観光客を目当てに韓国人企業家が自ら資本を投入してつくったホテル、飲食店、免税店の打撃は「100%」と痛烈だ。うち、ホテルは建設後に開業できない1軒のほか3施設が開店休業状態という。

対馬の地政学的重要性

 はじめに、対馬という島のほかに例を見ない特徴を押さえておこう。

 日本より朝鮮半島のほうがはるかに近い日本海に浮かぶ島であるゆえに、国の軍事的な拠点としての対馬の重要性が、歴史的に宿命付けられる。対馬は先史時代の昔から日本に属し、最初に歴史に記録された三世紀前半の「魏志倭人伝」でも、すでに倭国として扱われている。それから約1200年後の1471年に、朝鮮王朝の領議政(宰相)・申叔舟が編纂した「海東諸国記」でも、対馬を「日本国の西海道に属す」と記述している。

 しかし、新羅の賊船の襲撃に始まり、元(モンゴル帝国)と属国の高麗による侵攻(元寇)などから、軍事的防衛を何度も迫られた。古代から否応なく国の安全保障の要衝となってきたのだ。

 韓国にもっとも近い位置にあるばかりでない。対馬は、南北約82キロ、東西18キロ内外と細長く、その面積は離島を含め709平方キロに及ぶ。沖縄本島、佐渡島、奄美大島に次いで、日本で4番目に大きな島だ。地政学的な重要性が際立つ。

 韓国の李承晩大統領は、大戦後の1949(昭和24)年1月、対馬は韓国領だとして日本に返還を要求した。「竹島だけでなく、対馬も歴史的に韓国の領土だが、日本に強制的に不法に占拠された」と主張したが、日本を占領したGHQ(連合国軍最高司令部)に「根拠なし」と拒否される。

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