今年1月に特定抗争指定暴力団に指定されてから、六代目山口組と神戸山口組の対立は膠着状態に入ったかのように、両組織による派手な衝突は起きていない。それに加えてのコロナ禍で、長期化するかと思われていた山口組分裂問題だが、ここに来て少しずつだが、異変とおぼしき動きが出てきている。
先日、当サイトでも書いたが、ゴールデンウィークが明けると、京都に本拠地を置いていた神戸山口組の幹部だった雄成会の高橋久雄会長(当時)が突如、京都府警を訪れて、自身の引退と雄成会の解散を届け出たのである【参考「因縁の神戸山口組幹部が引退」】。それを受けて、六代目山口組サイドからは、雄成会や高橋元会長に今後手出しはしないようにとの通達が各傘下組織に回されたといわれている。
つまりそれは、高橋元会長たちはカタギになったので、もう六代目山口組の敵ではないということを宣言したようなものである。逆にいえば、高橋元会長は六代目山口組から“狙われていた”ため、それを避けるために引退という道を選んだともいえる。ただ、そうした選択をした高橋元会長に、神戸山口組サイドが下した処分は「破門」であった。
「高橋元会長自身の引退や率いた組織の解散は、独断で突然行ったものではなく、京都府警に出向く前には、神戸山口組の上層部にその意向を伝えにいったといわれている。ただ、のちの高橋元会長に対する破門処分を考えると、上層部とは、話し合いが円満に進んだわけではなかったのかもしれない」(捜査関係者)
ちなみに、高橋元会長の破門情報が流れたのち、そのことを記した神戸山口組本部名義の破門状が出回ったのだが、これは偽造ではないかと業界関係者の間では話題となった。これまで神戸山口組から発行された回状とは、字体などにやや異なる点があったからだ。
「今回の破門状は偽物という話だが、高橋元会長の破門自体は間違いないようだ。しかし、神戸サイドで起きた、幹部の動きはこれだけではない。高橋元会長の破門後まもなく、神戸山口組で舎弟を務めていた徳誠会・大澤忠興総裁も引退を表明したのだ」(地元関係者)
つまり、神戸山口組の執行部に名を連ねる幹部が立て続けに同組織を去ったのである。普通に考えるとこれはただごとではないが、ヤクザ事情に詳しい専門家はこう指摘する。
「神戸山口組の直参2人がほぼ同時期に破門と引退ですから、インパクトがあります。ただ大澤総裁が率いていた徳誠会は、ナンバー2である会長も神戸山口組の直参を務めており、組織もそのまま継続されている。ですから、大澤総裁の引退は、後進に道を譲るための既定路線だった可能性もあります。それでも、高橋元会長の引退、雄成会の解散というタイミングと重なったことで、神戸山口組内部で何かが起きているという印象を与えたでしょう。
実際、ことの真相はわかりませんが、最近は六代目山口組サイドに、某独立組織の上層部がたびたび訪れているという噂もあります。その独立組織は、神戸山口組との関係が深いと見られていましたから、水面下ではやはり何かが起こっているのではないでしょうか」
山口組分裂問題は、新たな局面を迎えつつあるのかもしれない。
(文=沖田臥竜/作家)