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コロナ・持続化給付金、電通が巨額税金“中抜き”疑惑…パソナと“トンネル法人”設立

文・構成=編集部
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川内博史議員(撮影=編集部)

 新型コロナウイルス感染症に伴い経済的な損害を受けた中小企業やフリーランスに最大200万円を支給する持続化給付金事業で、一般社団法人サービスデザイン推進協議会(以下、サ協)から事業の97%の再委託を受けた広告大手の電通が、人材派遣のパソナやIT業のトランスコスモスに業務を外注していた問題が波紋を広げている。サ協は電通、パソナ、トランスコスモスの3社が設立に関与していた。しかも連日の国会審議で、サ協自体の実体そのものが乏しく、公共調達の事務費の中抜きが行われたのではないかとの疑惑が高まっている。問題点を整理し、同問題の疑惑解明で国会審議をリードしている立憲民主党衆議院議員の川内博史氏(鹿児島1区)に話を聞いた。

実質的な“丸投げ”で電通、パソナが中抜きで利益計上か

 持続化給付金事業は経産省・中小企業庁が担当する事業で、全国150万事業者への給付を想定している。給付額は1事業者に対し、最大200万円。4月に成立した第1次補正予算で2兆3176億円を計上し、コールセンター事業や全国約400カ所に開設する申請サポート会場の運営などを、サ協に769億円で委託した。ところが、サ協は委託費の97%にあたる749億円で業務の大部分を電通に再委託したことが発覚。事実上の“丸投げ”ではないかという疑惑と、再委託を行った際に生じる差額20億円の合理性が問題になっている。

 サ協は2016年、電通、パソナ、トランスコスモスなどが立ち上げた一般社団法人。日本のサービス産業と地域経済を活性化するために創設された「おもてなし規格認証制度」を取り扱うことをメーン事業としている。今回の事業を含め、経産省の「サービス等生産性向上IT導入支援事業」「事業継承補助金事業」など14事業の手続き業務などを受託している。

 さらに川内博史議員は、6月5日の野党合同ヒアリングで、サ協から再委託を受けた電通は再委託費の749億円の86%に当たる645.1億円で、申請の受け付けやサポート、コールセンターなどの実務を関連会社5社に外注。電通が「管理」名目などで約104億円を得ていることを経産省に認めさせた。川内議員は次のように指摘する。

「外注額は電通ライブに595.7億円、電通テックに7.8億円、電通国際情報サービスに19.8億円、電通デジタルに16.3億円、電通東日本に5.5億円です。給付金支給業務と申請サポート会場業務を担う電通ライブからは、さらにパソナ、大日本印刷、トランスコスモスなどに外注しているが、その金額は未だに明らかにされていません。これらの会社がすべて『管理費』を得ているとすれば、電通の約104億円をはじめとする大規模な“税金中抜きシステム”になっているのではないでしょうか」

サ協の事業受託にまつわる様々な疑惑

 そもそも、サ協が今回の持続化給付金事業をどうして受託できたのかについても、多くの疑問点がある。経産省の関係者は話す。

「民間事業者によって設立されたはずのサ協の定款作成に、うちの大臣官房が関与したらしいと省内ではもっぱら噂になっていますよ。近年の緊縮財政の影響で、経産省のみならず他の官庁も、電通さんやパソナさんなしでは人員的にもノウハウの面からもできない事業はたくさんあります。どこまでが官民協力で、どこからが癒着なのか我々もよくわからなくなっています」

 また同給付金事業の公式サイトのドメインは、政府事業なのにもかかわらず「go.jp」ではなく、「www.jizokuka-kyufu.jp」となっている。前出の経産省関係者によると、このドメインはサ協が4月6日に独自に取得したもので、経産省が準備したものではないという。ところが、経産省が公表した「令和2年度補正持続化給付金事務事業」の公示は4月8日だ。サ協は公募が始まる以前から、すでに同事業の受託を見込んでホームページを作成し、準備をしていたことになる。そもそもサ協頼みで事業設計された可能性も否定できない情勢だ。

 電通関連会社の関係者は次のように話す。

「私はこの案件に関わっていませんが、東京五輪が延期になって社内が大騒ぎになってしばらくして『どうやら国の大きな事業が取れそうだからグループ全体としては大丈夫らしい』という話が流れていました。3月下旬くらいだったと思います。自粛で出勤できなくなってからも、Zoom飲み会でもそんな話はちらほら出ていましたが、まさかこの件だったのでは…」

 国民全体が、新型コロナウイルス感染症に伴う不況にあえぐ中、いったい何が起こっているのか。連日、国会で同問題を糺す川内氏に改めて話を聞いた。

川内氏インタビュー

――そもそもこの問題で、一番明らかにすべきことはなんでしょうか。

川内博史氏(以下、川内) 電通さんといえば、新卒の学生さんの人気も高いビッグネームです。そのビッグネーム以下、パソナさんやトランスコスモスさんといった企業グループが、新型コロナウイルス感染症に伴う情勢下においても、100%近い落札で税金を食い物にしているのではないか。経済産業省という役所は成長戦略とか生産性とか、政府の経済政策をリードする役目をはたしてきた役所です。それが果たして生産性なのか、成長戦略なのかということを、国会審議で一番に問いかけたいと思っています。

 持続化給付金は二次補正まで含めれば約1600億円の事務費、消費喚起策「Go To キャンペーン事業」は約3000億円の事務費です。ほかにも協議会をつくって、ブラックボックスの中で事務費をほぼ予算価格の100%落札で獲得しているさまざまな事業があるわけです。本来なら「中小・小規模企業やフリーランスの皆さんなど、この状況下で資金繰りに苦しんでいるひとたちに、1円でも多くいくようにしたい」と、そのための枠組みをつくるのが公務員の矜持ではないのかと思います。

 ところが、答弁に立っている経産省のみなさんに悪びれたところはありません。「配っているんだからいいじゃないのか」とそういう姿勢に終始しています。

――確かに給付事業に関して、経産省や中小企業庁の本体には人員やノウハウはありません。公平性や透明性を犠牲にして、作業的な効率を追い求めた結果ともいえると思います。

川内 日本にはさまざまな優秀な団体が山ほどあります。例えばサービスデザイン推進協議会が受託している事業承継補助金事業では、国会での質疑で2社応札であることがわかりました。サ協とともに、応札したもう1社は全国商工会連合会でした。事業承継の補助金の交付については、ノウハウや各事業者の実態把握の有無などから考えれば、商工会連合会こそがふさわしいのではないでしょうか。

 他にも去年、大学入試改革の問題で議論させて頂いたベネッセさんの例をあげれば、学生さんのアルバイトを瞬時に数万人集めることができる組織力がありました。いろんなところが可能性を持っている。電通、パソナグループだけではないのです。ほかにもたくさんの可能性があるのにもかかわらず、「電通ありき」と決めつけて、トンネル団体を通して事業を発注し、「別に違反していない」と言い張るのは生産性や成長戦略を言っている人たちがやることではありません。

 世の中には、法律があり、スポーツにもルールがあります。だけど、法律には背かない、ルールにも反していないかもしれないけれど、「ズルいな」とか「セコイな」と思うことはいっぱいあります。そういう「ズルいやり方」を経産省は正当化している。そして、同時に自分たちでもズルいやり方だとわかっているんですよ。だから開き直らざるを得ない。

 新型コロナウイルス感染症の問題は、みんなが助け合う、みんながお互いで知恵を出し合うことでしか乗り越えられない。誰かひとりの英雄やエリートが苦境を救ってくれるわけではないのです。だからこそ1円でも多く必要とする人に配れるようにするために、真剣に考えてほしいのです。

――川内議員は直接、サービス推進協議会の事務所を先々週、訪ねられたとのことですが。

川内 責任者の常勤理事どころから、従業員の方もいない。『リモートワークです』という張り紙はしてありましたが、2兆3000億円を配る団体に、本当に誰もいないというのは驚きでした。

――公共事業を取り扱っている企業の多くは、コロナ感染症に伴う自粛中であっても、公金の会計・経理に関し不明な点や不要な疑義を招かないために、責任者や担当社員が出社して、その都度きちんとダブルチェックをしています。医療関係の事業者などは特にそうです。「公の事業だから休めない」という話もよく聞かれます。

川内 しかもサ協には電話番号もありませんでした。そういう団体を、経産省は「しっかりした団体なんです」と一生懸命おっしゃるのです。サ協は一般社団法人法で定められている決算公告を官報に公告することさえしていません。果たして、これでしっかりした団体と言えるのでしょうか。トンネル団体だと、言わざるを得ません。少なくとも、経産省も実質的な仕事は電通以下が行うことを認知しています。

 この問題の一番の重要な点は、国が契約しているのはサ協なので、国が検査できるのはサ協のみという点です。そこから先の再委託や外注に関して、国は基本的に触ることができません。国家にとって、納税者にとって、それはダメでしょうということが、実は電通以下の企業グループにとっては最も旨味になる。

――元が公金であっても、再委託してしまえば透明性の確保が必要なくなるということでしょうか。

川内 経産省は「公共工事は情報公開の義務が明記されているが、公共調達はそこまで求められていない」と答弁しています。財務大臣が出した「公共調達の適正化について」という通知には、公共工事に関してはそうしろと書いてあるが、調達に関しては書いていない。確かに本文には書いていないけれど、前文に透明性は大事だと書いてあるわけです。ルールに書いていないとか、法律に書いていないとか言って、ズルいことをするのは国民の理解を得られないですよ。これほどみんなが苦しんでいるのですから。

――サ協は国の公募の前に、自前のドメインを取得していました。

川内 本来は膨大な個人情報・法人情報を扱うわけですから、政府関係のドメインは「go.jp」でなければならないはずです。サ協は「.jp」というドメインを取得して情報を集めいている。あってはならないことです。プライベートなドメインで国家の事業をしていることになります。本来は経産省が、落札業者が決まった時点で、「www.jizokuka-kyufu.go.jp」を取得した上で、落札業者に使ってもらうというのが筋だと思います。

――電通関連会社では、東京五輪の中止以降、「でも大丈夫だ」という噂があったそうです。

川内 政府のコロナ対策は東京五輪への未練があって後手にまわりました。五輪の延期が決まって、さあどうしようかとなった。そして、五輪をあてにしていた人たちがコロナに便乗してビジネスモデルをつくる。私たち庶民からすれば、「みんなはこんなに苦しんでいるけれど、どんな時でも美味しいごはんを食べれる人たちはいるんですね」と言いたくなります。

――コロナで利益を確保するために、まともな入札も行われないまま特定の企業が受注するのはフェアなんでしょうか。

川内 僕はずるいやり方だと言わざるを得ないと思います。独占禁止法、官製談合防止法、補助金適正化法などに違反している可能性もあると思います。一つひとつ事実を明らかにして、改めるべきところは改めていただくようにしたいと思っています。

(文・構成=編集部)

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