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有馬賢治「日本を読み解くマーケティング・パースペクティブ」(最終回)

コロナが落ち着き、“ノスタルジック消費”が主流に…過去の良い体験への渇望がよぎる

解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季
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「Getty Images」より

「with コロナ」(コロナと一緒に生きていく)という言葉が聞かれるようになり、新型コロナウイルス感染拡大が落ち着いても、かつての日常はもう戻ってこないとの見方がある。それはビジネスにおいても同じこと。では今後、企業は何を求められるのか。

 前回の記事で、変化する消費者のニーズとマーケティング的ニューノーマルについて紹介したが、今回は自宅での外出自粛を強いられたことによって生まれた新たな消費の価値観について、引き続き立教大学経営学部教授の有馬賢治氏に解説してもらう。

長い自粛生活で渇望した過去の日常的消費

「2カ月弱にわたった自粛生活で、多くの人が自粛疲れを感じつつも、自粛を明けた後のことに思いを馳せながら日々を過ごしてきたことと思います。では、その自粛期間中にやりたいこととして思い浮かべるものは何でしょうか。その大半が、これまで経験したことのある良い思い出の中にあると思われます」(有馬氏)

 例えば、長い入院生活の後に食べたいものは、食べたことのない外国料理ではなく、これまで何度も食べている大好きな料理だろう。普段の感覚であれば、人とは違った経験を、“映(ば)える写真”としてSNSに投稿して誇りたい気持ちが強くなるが、自粛から開放された時点ではそうはならない、というのが有馬氏の意見。

「テレビなどで紹介される自分にとって新しい“モノ消費”や“コト消費”は、自粛解除直後のやりたいことの候補にはなりにくいと思われます。おそらく、自粛明けに最初に消費の対象となるのは、自分にとって楽しかった経験から選ばれ、間違いなく楽しめる“モノ・コト”なのではないでしょうか。このような消費を名付けるならば“ノスタルジック消費”と呼ぶことができると思います。こうした“ノスタルジック消費”が今後しばらくは主流になるのでは、と予想した次第です」(同)

 また、ノスタルジック消費には個人的に慣れ親しんだもの以外に、世代が共有してきた懐かしいものも含まれると有馬氏。

「新たな社会的基準が人々に受け入れられる過渡期には、一旦過去の体験を満喫したいという気持ちを強く持つ人も多く出てきます。これは、変化についていけないのではないかという漠然とした不安の中で、自分にとって大切な思い出や懐かしいものに触れて安心したいという欲求です。世代によって懐かしいと思うものは千差万別ですが、例えば私の世代などは昔ながらの喫茶店でコーヒーを飲みながらゆっくりしたいと感じるように、各世代で代表的なブームとなった消費が、アフターコロナでは一定期間求められるのではないでしょうか」(同)

 これまでは常に新しい商品を消費者へ提案し、その新鮮さで顧客に受け入れてもらうのが企業の商品展開の王道だった。もし“ノスタルジック消費”が一定期間メジャーとなるならば、企業もそのつもりで企画を考案する必要が出てくるだろう。

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