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有馬賢治「日本を読み解くマーケティング・パースペクティブ」

「オンライン飲み会でいい」が定着した今、居酒屋は“客を取り戻す”発想から転換が急務

解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季
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「Getty Images」より

「with コロナ」(コロナと一緒に生きていく)という言葉が聞かれるようになり、新型コロナウイルス感染拡大が落ち着いても、かつての日常はもう戻ってこないとの見方がある。それはビジネスでも同じこと。では今後、企業は何が求められるのか。

 それを知るには消費者の消費活動の変化を知る必要があるだろう。そこで今回は、立教大学経営学部教授でマーケティングが専門の有馬賢治氏に “アフターコロナ”の消費行動を分析してもらい、あるべき経済活動について考えてみよう。

ただ安いものではなく品質重視へ

「今回の新型コロナによって、国民は“働くために暮らす”から“暮らすために働く”という非常に当たり前の価値観に気づいたのではないでしょうか。というのも、これまでは働き方が最初に決められていて、その派生で暮らし方が決まっていました。ですが、緊急事態宣言下における巣ごもり消費やテレワークによって、働くよりもどのように暮らすのかという課題が浮き彫りとなったからです」(有馬氏)

 それによって、これまで付随的であった生活様式がむしろ主導的に考えられ、働き方を選択する意識を持った人が多くなるだろうと有馬氏は指摘する。

 人間生活にとってこれは大きな変化だが、多くの国でロックダウンが行われるといった世界的な動向のなかで、生活の変化を受け入れることへの人々の抵抗感は比較的少ない。そんな状況で戸惑いは多いものの、コロナ騒動が落ち着いても消費活動や生活において新たなスタイルでのスタンダード、つまり“マーケティング的ニューノーマル”が確立される可能性が高いそうだ。

「“かつての生活”と“変化した生活”の2つの生活を比較することは新たなスタンダードを作る原動力となります。消費行動でいえば、今回のさまざまな報道で生産者やBtoBへの供給者などの苦労が一般消費者にも広く知られるようになりましたし、街中での飲食店のテイクアウト販売などいろいろな努力の形を見かける機会が頻出しました。これらに直面したことで、多くの消費者に単なる安売りを求める志向ではなく、品質重視で見合う価格を受け入れる値ごろ感が形成されるのでは、と私は考えています」(同)

 商品の選択だけではなく、消費行動そのものにおいてもこれまで当たり前になっていた慣習に変化が訪れることは予想がつく。とすれば、大きな変化が求められる業界も少なからずあるはずだ。それはどの業界で、どんな変化が必要なのか。

コロナ以前の顧客を呼び戻すのではなく、新たな市場の開拓へ

「飲食や交通、宿泊施設はこれまで以上に衛生対策をしっかりやらなくてはいけませんが、特に居酒屋などは業務形態に大きな変化が求められるでしょう。より安価ですむオンライン飲み会のメリットが知られてしまい、一方で料理をシェアするという基本の食事形態ですら、感染リスクを考えて敬遠されるものになってしまいました。ですから、コロナ以前と同じ客層を呼び戻そうという発想よりは、新たな客層を呼び込んで市場を開拓する意識を持つべきではないでしょうか。

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