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飛田砂織「100年寿命時代のウェルネスビーイング」

男性のうつ状態や性機能低下、LOH症候群の可能性…テストステロン量減少を防ぐ生活習慣

文=飛田砂織/クリニックシュアー銀座院長、医師・医学博士
男性のうつ状態や性機能低下、LOH症候群の可能性…テストステロン量減少を防ぐ生活習慣の画像1
「Getty Images」より

 しばらく前からLOH症候群(男性更年期・加齢性腺機能低下症)という言葉があるのをご存知でしょうか。男性にとってテストステロンが大切であることは知られていますが、そのテストテロンが成人男性において低下することにより起こるさまざまな症状(性機能低下、精神的な症状など)のことをいいます。特に、精神的な落ち込みやうつ症状を示す方や、サプリメントを飲んでも改善しない疲労感などを感じる方もいらっしゃいます。

 ある論文では、男性更年期について、いくつかの症状にまとめています。

・精神的、神経学的なもの:疲労感やエネルギーの喪失、うつ状態、無感情、ネガティブになる、いらいら、怒りやすい、機嫌が悪い、神経質、不安、物忘れ

・性機能低下

・代謝に関係する症状:血糖上昇、血圧上昇、脂質異常症

・筋骨格系の症状:背部痛、骨密度の減少、筋肉の減少、脂肪の増加

・睡眠障害

※Baum NH., et al. Testosterone replacement in elderly men. Geriatrics 2007;62:15-8.

 また、壮年期においてテストステロンが少ない群では、高い群に比べ死亡率が1.6倍高かった、とする研究もあります(Laughlin GA et al. Low Serum testosterone and mortality in older men. J Clin Endocrinol Metab. 2008;93:68-75.)。テストステロンが減っていると、腹部の内臓脂肪の増加を招き、心筋梗塞、脳梗塞や嚢腫結、糖尿病、シンドロームXのリスクを増やす可能性も指摘されています(Cunningham GR et al, Clinical Review; Androgen replacement therapy in the aging male. J Clin Endoclinol Metab 2001; 86(6):2380-2390.)。

 つまり、男性においてテストステロンは単に「男性らしさ」を示すためだけのホルモンではなく、男性が身体的にも精神的にも健康で長寿を全うするためにもとても大切である、と考える研究者も多いということです。

テストステロンを減らさない生活習慣

 テストステロンは加齢により、程度の差はあれ減少傾向になります。テストステロンを減らさないようにする生活習慣としては、適切な体重維持、肥満傾向があれば適正体重に体重を減らすこと、ビタミンD3の適切な補充(摂りすぎは過量になるので注意が必要です)、質の良い睡眠をとること、加圧トレーニング、適量の亜鉛、などが良いのではないかと考えられていますが、いずれもこれからもさらなる研究が必要です。

 女性にも男性と比較し、わずかながら卵巣や副腎から産生されるテストステロンが存在します。更年期にはこのテストステロンが減少することで、気分の落ち込みなどの一因になっている可能性も否定はできません。また、この少量のテストステロンが肌のはりや筋肉や腱、骨の健全な維持に役立っている可能性も考えられています。

 テストステロンは、男性が高齢になっても健康でいるために重要なホルモンです。できるだけ減らさないために、定期的な運動や良質な睡眠といった生活習慣、亜鉛、ビタミンDなどを適度に摂取する食生活など、生活の中での努力を継続することが大切だと思います。

 いつまでも心身ともに若々しくあるために、テストステロンに着目してみるのもよいかもしれません。

(文=飛田砂織/クリニックシュアー銀座院長、医師・医学博士)

飛田砂織/クリニックシュアー銀座院長、医師・医学博士

飛田砂織/クリニックシュアー銀座院長、医師・医学博士

美容皮膚科医・アンチエイジング医師 医学博士
東京女子医科大学附属成人医学センター非常勤講師(美容皮膚科)
群馬大学医学部卒業。東京大学などの救命救急センターで救急医として働いた経験や、激務で肌のトラブルを経験したことから、健康を保つための予防医療、美容皮膚治療の大切さを痛感。
日本初のレーザーなどの美容皮膚治療に特化した大学附属の美容皮膚科、東京女子医科大学附属青山女性医療研究所美容医療科(現在は成人医療センターに移転)助教(のち非常勤講師)を経て、2015年に、自らのクリニック、美容皮膚科・アンチエイジングクリニックである『クリニックシュアー銀座』を開設。

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