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石原結實「医療の常識を疑え!病気にならないための生き方」

コロナより年間死亡者が多い熱中症、マスク着用によりリスク上昇…医師が教える予防法

文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士
コロナより年間死亡者が多い熱中症、マスク着用によりリスク上昇…医師が教える予防法の画像1
「Getty Images」より

 長い梅雨が明ければ、猛暑が到来する。猛暑の時期に一番心配なのは、いわずもがな熱中症である。文字通り「熱に中(あた)る」ことで、脱水症や血液中の塩分(Na=ナトリウムやK=カリウム、Mg=マグネシウムなど)のバランスの乱れが生じ脳細胞がダメージを受け、頭痛、めまい、吐き気、ひどくなると幻覚・幻聴、せん妄(意識低下)を引き起こす病態である。

 2019年は5月から9月までの間に、約7万人が熱中症のため緊急搬送され、そのうち、1221人が死亡している。猛暑だった2018年の熱中症死は1581人で、うち65歳以上が1288人。これは、この5カ月の新型コロナウイルス感染による死亡者より多い。

 熱中症による死亡は40歳から徐々に増え、65歳より急上昇し、70代後半から80代の半ばがピークになる。

 今年の夏はコロナ対策のために暑くてもマスクを着ける人がほとんどだ。1000人の男女に対するあるアンケート調査によると、「夏もマスクの着用をするか」で75%、「猛暑日でもマスクを着用するか」で50%の人が「YES」と答えた。冬、寒いときのマスク、マフラー、ショール、ハラマキなどは各々が衣服一枚分の保温効果があると衣服気候学で証明されているので、猛暑日のマスク着用は熱中症のリスクを高めることになる。

 コロナ感染拡大予防のための「新しい生活様式」における熱中症対策予防行動のポイントとして、環境省や厚生労働省から、以下の提言が出ている。

1.屋外で人と十分な距離が確保できる場合にはマスクを外す

2.マスク着用時には激しい運動は避け、こまめに水分補給

3.冷房時でも換気。熱中症予防のために温度設定をこまめに調整

4.日頃から体調管理を。体調が悪いときは無理せず静養

ヨーグルトとバナナを同時に食べる

 これまで「熱中症対策」として「水分をこまめに摂る」ことくらいしか推奨されてこなかったが、兵庫医科大学の元教授で「教えて!「かくれ脱水」委員会」の委員長の服部益治博士は去る7月8日の産経新聞紙上で、コロナ対策でマスク着用をすると、「口や鼻から呼気と共に逃げる熱が体内にこもる」し、「外出自粛で運動量が減少し、筋肉量が減る」ので熱中症のリスクが高まる、と指摘している。

「筋肉量と熱中症」の関係について少し説明を加えると、体重の約40%が筋肉で、筋肉の約70%は下半身(へそより下)に存在する。実はこの筋肉こそが「水分を保持する人体最大の器官」というのだ。「冷却水」という言葉があるように、筋肉量の多い人は筋肉中の大量の水分が「冷却水」となって熱中症の予防になるといってよい。

 年齢と共に筋肉の量が減少してくると、水分保持能力が落ちる。このことも65歳以上の高齢者が熱中症に罹る率が上昇する一因であるといえよう。よって、人体最大の筋肉である大腿筋(太もも)と臀筋(お尻の肉)を鍛えられるスクワットやウォーキングを毎日励行するとよいとのこと。

 服部博士は、筋肉増強につながる優秀な乳タンパクを供給してくれるヨーグルトの常食も奨めている。ヨーグルトは血液中のアルブミン(タンパク質)の濃度も高める。アルブミンは周囲から水分を引き寄せてくるので、血液中の水分量も多くなる。すると発汗しやすくなり、発汗により気化熱が奪われるので余分な体熱を下げられる、と同博士は指摘している。それに加えて血液中の豊富な水分が冷却水の働きをすると、私は思っている。

 また、服部博士はヨーグルトとバナナやミネラル類(K=カリウム、Mg=マグネシウムなど)を一緒に食べることも推奨している。大量の発汗によって失われるビタミン類(B群、Cなど)がバナナに多く含まれる。ヨーグルト100グラム中にバナナ1本を刻んで入れて食べるとよい。

 これまで一般に言われていなかった斬新な熱中症対策を指摘しており、敬服に値する。

「陰性食品」を摂る

 こうした新しい西洋医学的理論に、私が45年間勉強してきた漢方医学的理論を加えてみる。漢方医学では食物の含有成分(タンパク、脂肪、糖、ビタミン類、ミネラル類)や含有カロリーとはまったく別に、食べると「体を冷やす(陰性)食物」と「体を温める(陽性)食物」を峻別し、健康増進や病気治療に役立ててきた。

 体を冷やすのは「南方産」「水分が多い」「甘い」などの食べ物であり、体を温めるのは「北方産」「固い(水分が少ない)」「塩辛い」などの食物である。食物の外観が「青・白・緑」=「陰性食品」、「黄・黒・橙」=「陽性食品」と端的に言ってよい。

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 なお、トマト(南米原産)、スイカ(西アジア原産)、コーヒー(エチオピア原産)は熱帯~亜熱帯なので外観の色が濃くても体を冷やす。日本人が昔から夏には冷やソーメンや冷や麦、キュウリの酢の物、冷やした緑茶やビール、スイカ、ナスの漬物、冷ややっこなどを存分に食べ、暑さをしのいできた理由がおわかりだろう。漢方の陰陽論など理論に従ったのではなく、体を冷やす食物を本能が欲求していた、ということなのである。

石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士

石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士

1948年長崎市生まれ。長崎大学医学部を卒業後、血液内科を専攻。「白血球の働きと食物・運動の関係」について研究し、同大学大学院博士課程修了。スイスの自然療法病院B・ベンナー・クリニックや、モスクワの断食療法病院でガンをはじめとする種々の病気、自然療法を勉強。コーカサス地方(ジョージア共和国)の長寿村にも長寿食の研究に5回赴く。現在は東京で漢方薬処方をするクリニックを開く傍ら、伊豆で健康増進を目的とする保養所、ヒポクラティック・サナトリウムを運営。著書はベストセラーとなった『生姜力』(主婦と生活社)、『「食べない」健康法』(PHP文庫)、『「体を温める」と病気は必ず治る』(三笠書房)、石原慎太郎氏との共著『老いを生きる自信』(PHP文庫)、『コロナは恐くない 怖いのはあなたの「血の汚れ」だ』など、330冊以上にのぼる。著書は韓国、中国、台湾、アメリカ、ロシア、ドイツ、フランス、タイなど世界各国で合計100冊以上翻訳出版されている。1995~2008年まで、日本テレビ系「おもいッきりテレビ」へのレギュラー出演など、テレビ、ラジオ、講演などでも活躍中。先祖は代々、鉄砲伝来で有名な種子島藩の御殿医。

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