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ドンキ運営元、訪日客消滅でも増収増益の秘密…ミリオンスター制で実力主義&権限移譲

文=編集部
ドンキ運営元、訪日客消滅でも増収増益の秘密…ミリオンスター制で実力主義&権限移譲の画像1
ドン・キホーテ本社(「Wikipedia」より)

 国内の経済活動は徐々に動き出しているが、本格的回復にはインバウンド(訪日外国人)の消費が不可欠だ。7月の訪日外国人数は前年同月比99.9%減の3800人。4カ月連続で実質ゼロの状態だ。訪日外国人はいつ戻ってくるのか。小売業はインバウンド向けをゼロとした業績予想を立てている。

 お盆前の8月13日の東京株式市場。ドン・キホーテ(ドンキ)などを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)の株価が急伸した。一時、前日比272円(11.7%)高の2594円と株式分割を考慮後の上場来高値を更新した。2021年6月期の連結純利益が前期比1.4%増の510億円になりそうだと12日に発表したのが材料視された。12年連続の増益見通しを好感した買いが集まった。

 売上高は1.1%増の1兆7000億円を見込む。20年6月期に420億円あった訪日客による売り上げはゼロになるとした上で、総合スーパー、ユニーが下支えするとみている。営業利益は1.3%増の770億円を計画。25年連続の増収、営業増益を目指す。年間配当は1株当たり16円と前期の15円から1円積み増す。

 市場ではインバウンド需要なしで増益を打ち出してきたことを評価する声が多い。ユニーの好調の背景にはユニーの売り場のドンキ化、「MEGAドン・キホーテUNY」への業態転換がある。PPIHは19年7月~20年3月期の連結決算を発表した5月の段階では、コロナの影響を見込んで20年6月期の業績予想を下方修正したが、会社側の予想が覆った。

 20年6月期の連結決算の売上高は前期比26.6%増の1兆6819億円。従来予想(24.2%増の1兆6500億円)を300億円強上回った。営業利益は20.4%増の759億円。従来予想(12.5%増の710億円)を大きく上回り、通期の営業増益は24年連続となった。純利益は6.9%増の503億円。減益見通し(2.3%減の460億円)だったが、一転して11年連続の最終増益で着地した。

 業績予想を上方修正するまでに持ち直したのはなぜか。

 コロナ渦中の20年4~6月の3カ月間の売上高は前年同期比1.5%増の4161億円、純利益は32.1%増の119億円と増収・増益を確保したことが大きかった。既存店の売り上げを見ると総合スーパーのユニーが業績を牽引したことがわかる。食品を中心に生活必需品が売り上げを伸ばした。4月を除き1月から一貫して前年実績を上回った。5月は6.4%増、6月は9.2%増と夏物衣料の肌着や部屋着などが売れた。7月も6.9%増と“ウチナカ需要”を反映して食品のほかゲームなどの玩具が好調を持続した。

 8月12日のオンラインでの業績説明会では冒頭、安田隆夫創業会長兼最高顧問のビデオメッセージが流された。安田会長は「新型コロナウイルスの影響で、優位な立地が都市部は駅近くから郊外型のロードサイド店舗へ、短期間かつ劇的に変わった。当社はインバウンド需要の蒸発をロードサイド店が補った」と述べた。

ドンキは全体売り上げの9.8%に相当する免税需要が蒸発

 ディスカウントストアのドン・キホーテは訪日外国人の大幅な減少により、時計やカバンなどブランド品の高額消費が見込めなくなった。3月から既存店売上高は前年同月を割り込んだ。3月は12.1%減、4月10.2%減と2ケタ減少したが、5月は3.0%減、6月は9.4%減と1ケタの減少で踏みとどまった。7月も9.6%減である。

 一方、テレビ会議用のカメラやイヤホンといった在宅勤務に伴う商品の販売が増えた。エアコンや扇風機、空気清浄機は手頃な価格帯の商品を揃え、売れ行きを伸ばした。コロナ下の新常態に対応した品揃えの強化でインバウンドの急激な落ち込みを緩和した。大阪、福岡、沖縄店はインバウンド依存度が高いことで知られる。

【ドンキの免税売上高構成比上位10店】(19年7月1日~20年6月30日)

順位  店舗名        売り上げに占める免税売り上げの割合

1.道頓堀北館(大阪)        80.5%

2.道頓堀店(大阪)         61.2%

3.道頓堀御堂筋店(大阪)      54.4%

4.国際通り店(沖縄)        48.5%

5.銀座本館(東京)         47.5%

6.なんば千日前店(大阪)      42.2%

7.名古屋栄店(愛知)        40.5%

8.福岡天神本店(福岡)       39.1%

9.京都アバンティ店(京都)     38.7%

10.新宿歌舞伎町店(東京)      37.7%

(道頓堀北館は休業中)

 中国からのクルーズ船の寄港地となっている大阪、福岡、沖縄の店舗は、インバウンド御用達の店として知られている。中国人観光客がカネを落とす大阪は、インバウンド景気に沸き、19年4月、ドンキ初の「インバウンド強化店」として道頓堀北館を開店した。

 しかし、今年2月以降、訪日観光客が激減し、ほぼゼロになった。インバウンド強化店の道頓堀北館は休業に追い込まれた。道頓堀店の免税売上高比率は19年6月期の71.6%から61.2%へと10.4ポイントダウン、道頓堀御堂筋店は66.5%から54.4%へ12.1ポイント下がった。全店でも9.8%から6.0%に落ち込んだ。今期は免税売上高がゼロになる。どうやって蒸発した免税売り上げを補うのか。

成果主義による各地域への権限委譲をテコに浮上策を練る

 PPIHは9月、商圏ごとに成果主義を取り入れた新たな店舗統治の仕組みを導入する。制度名は「ミリオンスター制度」。約100万人の商圏に1人の支社長を置く。支社長には、商圏内のドンキ、MEGAドン・キホーテUNYなどに対する予算や営業戦略の立案などの権限を与える。支社長は全国で100人ほどになる見通しだ。

 各商圏の支社長に権限を委譲し、成績に応じて報酬や処遇を決める。若手を抜てきするなど現場の工夫を引き出し、商圏に最適な品揃えや売り場づくりを進める。売り上げや利益などの成果に応じて成績を評価し、好成績をおさめた支社長には執行役員並みの給与を支給する。一方で下位2割程度の支社長は入れ替えの対象となる。

 インバウンドゼロのコロナ禍での環境変化への対応力を高めるのが狙いだ。創業者の安田氏が、創業会長兼最高顧問(取締役)として、ウィズ・コロナに対応した組織づくりの陣頭指揮を執る。

(文=編集部)

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