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三菱商事の屈辱、伊藤忠に歴史的敗北で商社首位陥落…伊藤忠が恐れる“中国ハプニング”

文=有森隆/ジャーナリスト
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伊藤忠東京本社(「Wikipedia」より/Rs1421)

 伊藤忠商事の岡藤正広会長兼最高経営責任者(CEO)は、今期「三冠」を目指すと宣言した。「三冠」とは、株価、時価総額、21年3月期決算の税引き後利益で三菱商事を抜き、名実ともに業界トップになることを意味する。

 株価と時価総額は6月段階で抜き、その差はどんどん広がっている。伊藤忠の株価は2723.5円、時価総額は4兆3164億4700万円。三菱商事は2512.5円、3兆7328億7900万円(いずれも8月31日終値時点)。株価は6月22日に逆転してから一度も抜き返されておらず、8月20日に最大、318円の差がついた。時価総額の差は同日の7312億8400万円。

 残るは21年3月期の連結最終利益。伊藤忠は4000億円(国際会計基準)とすでに公表している。三菱商事は「未定」としていた最終利益を前期比63%減の2000億円(同)と8月13日に明らかにした。伊藤忠の半分、市場予想平均のQUICKコンセンサス(2486億円)を下回った。

 当初、三菱商事は伊藤忠と同じ8月5日に決算発表を予定していたが、8月13日に変更した。「伊藤忠の4~6月期決算を見極めるための、戦略的な発表延期」(外資系証券会社)といううがった見方が出ていた。

「伊藤忠の決算数字を見て、三菱商事はギブアップした。対抗するよりも、どんどん損失を落とす方向に転換したようだ。記者会見した増一行最高財務責任者(CFO)は『今期は採算の悪い事業の整理を進め、今後に向けた体力をつけていく』と敗北宣言をした」(外資系証券の商社担当アナリスト)

「一言でいってしまえば、三菱商事はCOVID-19(コロナ)の直撃を、まともに受けた」(ライバル商社の財務担当役員)

 三菱商事の21年3月期の純利益は新型コロナの影響で3000億円押し下げられる見通しだ。このうち資源分野が1200億円を占める。オーストラリアの原料炭事業で需要が低迷し、金属資源事業の純利益は前期比7割減の630億円となる。天然ガス事業も資源安が響き大幅減益に沈む。

 自動車関連への影響も1200億円と大きい。出資する三菱自動車工業が世界的な販売台数減少で大幅な最終赤字となるほか、タイ、インドネシアの自動車販売で苦戦する。自動車・モビリティ事業は500億円の赤字に沈む。

 コンシューマー事業は外出自粛が逆風になり、子会社のローソンやアパレル関連ビジネスが低迷。事業利益は7割減る見通しだ。資源の不振に目が行きがちだが、「三菱商事の場合、非資源の減益率が他の商社に比べて圧倒的に大きい。非資源の減益率は三菱が79%減。対する伊藤忠は25%減だ」(同)

伊藤忠が注視する中国CITICの動向

 コロナ禍の総合商社7社の4~6月期の最終利益は、三菱商事が366億円で業界4位に後退。住友商事がアフリカ・ニッケル鉱山で減損を計上し、410億円の赤字に転落。21年3月期(通期)の最終損益でも唯一、1500億円の赤字を見込むなど、資源=重厚長大系商社の苦戦が目立つ。

 利益の首位は伊藤忠の1047億円がダントツ。4~6月期の実績を4倍すると目標の4000億円を優に超える。食料など景気変動に強い分野が業績を下支えした。

 三菱商事の垣内威彦社長は、社長に就任した16年、「首位を奪還したら二度と(伊藤忠に)その座を譲らない」と明言した。今、この“公約”(コミットメント)が垣内社長に重くのしかかっている。21年春、三菱商事のトップ人事が商社首脳の関心を集めることになるかもしれない。

 伊藤忠は8月25日、子会社のファミリーマートに対して実施していたTOB(株式公開買い付け)が成立した。TOBによって出資比率を65.71%まで引き上げる。残りの株式は、ファミマが10月下旬に実施する臨時株主総会を経て、株式統合によって取得。完全子会社にして、上場廃止とする。

「非上場化に伴うシナジー効果が本当に出てくるのは来期(22年3月期)以降」(伊藤忠幹部)

 ファミマを戦力化できればかなりの利益の上積みを期待できるが、経営の自由度が下がり、現場の士気が低下するなら、絵に描いた餅に終わる懸念がないわけではない。

 岡藤会長兼CEOは三菱商事を抜き、悲願としてきた業界トップに立つ勢いだ。「経営者は油が乗り切っている時に(自分の油で)滑る。これを油断という」。ホンダの創業者、本田宗一郎の言葉を、岡藤氏は自らの戒めとしている。「時価総額や株価一番などと言われて浮足立っていると、世間から反感を買い、せっかく築いた伊藤忠のイメージが一瞬にして壊れてしまう。これが一番怖い」。岡藤氏は、こう周囲に語っているそうだ。

 中国の国有企業CITIC(中国中信集団)に6000億円投資したが、成果が挙がっているとはいいがたい。

「今春、CITICは知日派の常振明董事長(会長)が退任。後任は中国人民銀行の朱鶴新副総裁」(北京在住の金融関係者)。コロナ政変に怯える習近平政権にとって「国有企業改革」は待ったなしだ。伊藤忠はCITICの動向に最大の関心を払っている。

 もし、岡藤氏の野望が潰えることがあるとすれば、「独壇場」(伊藤忠幹部)と自負する中国でハプニングが起きた時だろう。

(文=有森隆/ジャーナリスト)

有森隆/ジャーナリスト

有森隆/ジャーナリスト

早稲田大学文学部卒。30年間全国紙で経済記者を務めた。経済・産業界での豊富な人脈を生かし、経済事件などをテーマに精力的な取材・執筆活動を続けている。著書は「企業舎弟闇の抗争」(講談社+α文庫)、「ネットバブル」「日本企業モラルハザード史」(以上、文春新書)、「住友銀行暗黒史」「日産独裁経営と権力抗争の末路」(以上、さくら舎)、「プロ経営者の時代」(千倉書房)など多数。

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