
新型コロナウイルスの影響が長期にわたって続く可能性が高くなっています。その要因は「人々の意識と行動の変容」です。「Go Toトラベルキャンペーン」が始まった夏休みでも人が動かなかったのを見ると、コロナそのものの脅威というよりも、「人の心理的委縮」のほうが大きいと感じます。
昼間はともかく「夜は飲みに行かない」という人は多いですし、大企業を中心に「自社からクラスターを起こすわけにはいかない」という警戒感から、社員の飲み会そのものが禁止されています。旅行もしかりで、「東京に行くだけで非難される」「東京から来るだけで非難される」という状況が続いており、私の友人知人も「東京出張を人に言えない」「東京に来ていることがバレないよう、SNSに写真をアップしないでほしい」などと言われるほどです。
リーマンショックのときのような金融恐慌は、再びお金が回り始めれば回復しますし、震災なども復興が進めば回復します。しかし今回の人々の意識と行動は明らかに大きく変容しており、ちょっとやそっとでは元に戻ることはないだろうな、と感じます。そして、もし冬に再び感染の波が来たら、「やっぱり人と接触してはダメなんだ」と国民の行動はさらに委縮するでしょう。
失業のビッグウェーブがやって来る
今年4月以降、倒産件数は増加していますが、これは法的整理ゆえに統計として計測できるだけで、実際には自主的な廃業が増加しており、それにともなって失業者数もうなぎ登りです。というのも、廃業届を提出したり清算手続きをする事業主はまれで、多くはただ従業員に辞めてもらって、ひっそりと店の賃貸契約を解約するだけだからです。
店舗を閉じればそこで働いている従業員は職を失いますから、苦境に陥るのは店主とその家族だけではなく、従業員とその家族も同じです。失業せずとも、たとえばシフトを減らされるとか、会社員でもボーナスがカットされるといったことも起こっています。旅客・観光業界や居酒屋業界はもとより、店舗系の業態は焼け野原になる可能性があります。今はまだ耐えることができたとしても、これが長期にわたれば「もう無理」という企業も少なくないでしょう。
これで間接的に影響を受けるのが、こうした地元企業・地元商店に融資をする地方銀行です。融資先が倒産すれば貸したお金は返ってこないわけですが、その原資は市民の預金ですから、これ以上焦げ付かないよう銀行も貸し出しを躊躇するようになります。あるいは地方銀行の経営そのものが危うくなり、合併や統廃合が進むかもしれません。バブル崩壊の影響で金融機関がバタバタ倒れたのが西暦2000年前後と、バブル崩壊から約10年遅れでやってきたように。すると本当に資金を必要とする企業にお金が回らず、倒産や廃業が加速する恐れがあります。